身内ネタですが、今日オーシャナにアップされた記事がとてもおもしろかったです。
(オーシャナというのは、僕が他のお二人とやっている海とダイビングの総合サイトです)

水中写真家である越智さんの写真の撮り方。
そして、撮るときに考えていることと、その状況へのスタンス。
そんなあたりのお話です。
(本人は”写真家”より”カメラマン”という呼称の方がしっくりくるみたいですが)

「一番予想不可能なのはダイバー」越智隆治といくフォトツアー@セブのジンベエザメ ~ワンポイント・フォトレッスン~ | スキューバダイビングと海の総合サイト ocean+α(オーシャナ)

ジンベイザメだらけのセブ島の海と、ダイバー

ジンベイザメだらけのセブ島の海と、ダイバー


動物の動きよりも人間の動きの方が読みにくい

この上の↑写真を撮ったときのことについての、越智さんの言葉、というか考え方。

「臨場感を出すためには、自然な状態で撮影しつつ構図を決めなければならない。
だから、一番大事なのは生き物たちがどう動くのか予想して、先回りすることかな。
ジンベエザメも同じ。でも、実は一番予測不可能なことをするのがダイバーなんだけど」

そんなダイバーの動きを予測するには、一人ひとりのパーソナリティを把握することが大事だと越智は言います。
あれやこれや打ち合わせすることなくサラッと潜っているように見える越智ですが、水中はもちろん、陸上でよく人間観察をしていて、ダイバーがどうやって動くかを予測して撮影ポジションに先回りするのだそうです。

僕も越智さんと打合せやいろんな話をしていて、「人の性格を正確に把握するなあ」ということをよく感じます。
その長所が仕上がりとしての写真に確実に表れているんだと思います。

越智さんは特に水中写真家の中でもダイバー(や人)を入れた写真を好むタイプでもあります。
それについても「自分がもともと報道カメラマン出身だけあって、人が入った方が臨場感が出るから」と前に言っていましたが、それにはこうやって人の性格と行動を読む能力が必須になるんでしょうね。

「水中写真家」という言葉の響きだけ聞くと、「生き物と対峙する」という印象を持つ方は多いと思いますし、実際にそういうタイプの人の方が多いのかもしれませんが、そんな中で越智さんのスタンスは異色で面白いなと思うんです。

クジラもマナティーも人間も同じ

おもしろい一例を紹介すると、クジラ撮影で、皆クジラを撮影するために追いかけようとしたときのこと。
越智が「ここで待っていればくるよ」と皆をストップ。

というのも、クジラの進む先に、ファインダーの中だけに夢中なダイバーがいたので、「あ、たぶん突っ込むんだろうな」と予想していたから。
案の定、そのダイバーが突っ込んだので、クジラはUターンして戻ってきました。
皆は、マジックのように感じましたが、これも人間観察のたまもの。
というより、越智にとって、クジラもマナティーも人間もただの水中生物なのかもしれません。

この文章を書いているのはオーシャナ編集長の寺山さんなんですが、「越智にとって、クジラもマナティーも人間もただの水中生物なのかもしれません」ってフレーズは面白いですねえ。
でもきっとそうなんだろうなあ。

人間の性格と行動のうけとめ方

越智カメラマンの話を聞いていると、被写体に夢中になることもなく、サッカーの司令塔のように、状況を常に俯瞰しているように思えます。
点を取るより、自分の想像通りに試合が進むことに喜びを感じるタイプといった感じ。

なので、例えば誰かが群れに突っ込んで散らしてしまっても、撮影でイライラすることはまったくなく、「あ、予想が外れたなって思うだけ。状況を把握したら、後はその範囲で最善を尽くすだけだから。逆に、一般的には非難されるようなダイバーの行動でも、逆手にとって撮影すると、想像以上の写真になることもあるよ」

水中写真家は一般のダイバーと一緒に潜る機会もけっこう多いわけですが、そういう時にこのような考え方をもってるかどうかって、本人的にも周囲の人的にも「幸福度」がだいぶ違うんじゃないでしょうか。

僕は写真家ではないですが、そういう考え方(人の行動に対する受け止め方)は越智さんと似てるなあと思っています。
ちょっと大げさなことを言えば、私たちが海や自然から学ぶことって、そういうことなんじゃないかなと思います。
つまり、周りの人の性格だとか行動だとかをありのままに受け止める、という。

僕たちは通常、写真家の人が仕上げたアウトプットとしての写真ばかり見るわけですが、こうやってその人の「頭の中」を文字として見て理解するのって面白いなあと思った記事でした。