the HIATUSのAfterglow Tourに行ってきました。

the HIATUS Afterglow Tour 名古屋 2012.11.18

ブルーレイの「Afterglow」を観てから、もちろんこの映像作品が「全く新しいアレンジのライブをする前のリハ風景を収めてツアー前にドキュメンタリーとしてリリースする」というとてもレアで面白い試みであることも含めて、もうこのツアーが楽しみで楽しみで。
YouTubeでのトレーラーはこちら。

言うまでもなく、「The World Of Pandemonium」というアルバムが大好きです。
どれほど好きかというと、去年リリースされたアルバムの中で、日本人のアルバムとしては一番に挙げたぐらい。
洋楽・邦楽170作品の中から悩み抜いて選んだ2011年ベストアルバム25 | いぬと海
(音楽は数値では測れるものではないですが、こういう時に自分なりのランキングを記しておくととても便利)

今日は一瀬さんが欠場だったみたいで。
というかこのツアーの情報をあまり摂らないようにしていたので、ツインドラムというのもこの堀江さんのツイートをきっかけに初めて知りました。

名古屋に着いて、同じくこのライブに行く友達夫婦とごはん食べて、会場入り。
なんかその友達夫婦は1階の中央、前から2列目というめっちゃいい席で、2階席の僕たちと手を振り合ったりしてました。

ステージ上は写真のような感じ。
(ちょっと写りが悪いですが)
グランドピアノの他に管楽器・弦楽器があることはもちろん、この雰囲気がとってもいい。
期待が否が応にも高まります。
このAfterglowツアー、そして僕にとって初めてとなるこの名古屋公演、ライブ前にこんなにワクワクしたのは久しぶりかもしれないというほどワクワクしてました。

序盤で思ったこと、いくつか

「Afterglow」のブルーレイでも何度も観た、「Deerhounds」のイントロのフルート。
うおー、ようやく生で観られる!聴ける!という胸の高鳴り。

そういうの、通常はCDや音源を聴いて「ライブでようやく聴ける!」って流れなわけですが、その前提(情報)が単なる音源ではなくドキュメンタリー的な映像作品というだけで、これほど期待感や高揚感が違うのか、ということも感じました。

2曲目の「Flyleaf」、細美さんが「一瀬さんがいないから手伝って!」と言って手拍子を求めてたんだけど、リズムが難しすぎますよあれ(笑)
しかもそこで拠り所にしたいはずの柏倉さんはいつものようにフリースタイルなドラミングをしてるわけで、そっちも聴きたいけど手拍子もするとなると…無理!って。

ここまで終わって細美さんが「俺が言ったからってしなくていいんだけど、みんな自由に体動かしていいんだからな!」と言って「Ghost In The Rain」が始まると、会場総立ちに。
こういうホールの時って、立っていいのか座ったままがいいのか、悩みますよね。
僕もそういうところでは空気読んじゃうところがありますし(自分の場合どっちでもほぼ等しく楽しめる、というのもありますが)。

この「Ghost In The Rain」、「一つ目のハッピーの山場」と言えるほど、雰囲気がすごくよかった。
今回のAfterglowツアーって、ともすれば「ハイセンス」「オシャレ」という方向になりがちなのかもという予感がしないでもなかったですが、いやそうじゃないんだな、と確信した、この曲この瞬間。
最近のthe HIATUSのライブ、特に中盤から後半にあるようなあの幸せな光景が、このAfterglowツアーでも再現されているのがすごい、そして嬉しいと思いました。
サビのところで堀江さんが思いっきりジャンプしてから弾いてる姿もとてもよかったです。

次の「My Own Worst Enemy」はANOMALYツアー時から僕がライブで大好きな曲なんですが、これはストリングス隊・ホーン隊が入る余地があまりないのかな、と。
僕がライブで大好きな理由と表裏一体なんですが、ひとまず一つ(ライブでも)完成形になってると思うんですよね。
そこから5人のバンドのアレンジもあまり変えずにストリングス・ホーンを加えようとしてもなかなか入れないのかな、と感じました。

裏を返すと、それが「ANOMALY」までの曲の作り方なんですよね、きっと。
「The World Of Pandemonium」はそれとは違う可能性・広がりのある楽曲たちだから今回のツアーができたわけで、そこらへんぜんぶ繋がるのかなあ、と。

次の「The Tower and The Snake」「Bittersweet / Hatching Mayflies」は主にサックスがすごく目立つアレンジになっていたりして、そこはやっぱり3rdの曲なんだなあと思ったり。

ちなみにこの感想エントリ、それぞれの曲ごとの感想が最後まで続くわけではないですよ。
そんなにいちいち覚えてられないですよ。

中盤でいくつか

「おいおい、すごい隠し玉もってますね!」と感じたのが「The Ivy」

僕は事前にセットリストも知らないし、「Afterglow」ブルーレイに収録されてた「3rdの曲+The Flare」しか演奏確定っぽい曲を知らなかったので、他にどんな曲やってくれるんだろう(それとも曲数少ないのかな)とか思ってました。
そこでこの「The Ivy」、ストリングスがとても効いていて、全く、そう全く別の曲かのように聴こえて。
いやー、すげえなと思いました。
この日のライブで最も「発見」感が強かった曲。

次の「Little Odessey」も原曲とはガラっと変わって、チェロと堀江さんのピアノと細美さんの歌、というアコースティックな形。
原曲の美しさをストレートに表現した王道的なアレンジで、これも素敵。

かと思いきや、「Monkeys」「ベテルギウスの灯」は打って変わって5人だけのバンドスタイル。

いやー、他の曲にも言えるんですが、そもそも「the HIATUSのライブをホールで聴ける」っていうこと自体、宝物のような体験でもありますよね。
「ベテルギウスの灯」では会場全体が再び幸福なオーラに包まれて、まるでホールの良いところを兼ね揃えたライブハウスのような。

そういや友人が

ここらへんのMCで、すっかり気分がよくなった細美さんが前方のお客さんに向かって「『Flyleaf』で俺とお前だけ手拍子してたよな、『わかんねー!』とか言いながら(笑)」って話してたんですが、終演後に聞いたらそれが僕の友人だったらしい。
(なんとなく話してる場所から、「もしやあいつのことか」と思ってたんですが)

センチュリーホールで細美さんとほぼ二人の会話するとか、あいつなんて幸せもんなんだ…。
その友人、なんだか他のライブでもアーティストから話しかけられることが何回もあるんですよね。
こういう「人の引き」みたいなのって、なんなんでしょうね。
あいつ、すげえな…。

マキシマム ザ ホルモンのナヲさん

「The Flare」の前に、細美さんがこの日のサプライズを紹介。
一瀬さんの代わりのゲストがマキシマム ザ ホルモンのナヲ。

登場してすぐ「三度の飯より!」「飯が好きー!」を叫べるお客さんたちは、やっぱりそういうお客さん層が集まってるんだなあ、と。
そういう「ロック馬鹿」な人たちが(特に3rd以降の)the HIATUSの音楽も好きで、さらにこういう試みのツアーにたくさん来てくれていることだけ目の当たりにすると、「いや、日本のロックの未来も悪くないんじゃ?」とか思ってしまいます。

そしてナヲさんのしゃべりはほんと上手い。
細美さんもそれにどんどん返していく反射神経とか、やっぱりすごいなあと思いながら二人の掛け合いを見てました。

以下の件がとてもよかったな(特に細美さんが)。

ナヲ「(心配そうに)大丈夫かな…」
細美さん「大丈夫とかじゃねえよ、楽しむんだよ」
ナヲ「失敗しても友達やめないでね」
細美さん「バカ、失敗するのが友達だろ!」

こういう認識が当たり前のことで心に沁みついているから、こうやって脊髄反射的に出てくるんですよね。

ところでナヲはこれ以降、アンコールより前の本編ラストまでいて、その後の曲ではマラカス振ったり簡単なリズムを叩いたり。
その様子に豪快さのかけらもなくて、まさに借りてきた猫のようで、しおらしいなあ、緊張してるんだなあとすごく伝わりました。

終盤の曲はもう隙がなくて完璧のように思えて

「Insomnia」以降の終盤の曲は、「うわー、もうAfterglowツアーにぴったりハマる曲揃えてきたなー!」という怒涛の展開。
「Ghost In The Rain」のところでも書いたことの繰り返しになりますが、「Insomnia」でもホールの華美さとライブハウスの情熱が同居して沸騰していることに驚きました。
僕が勝手に思い描いていたよりも、温度が2,3℃高い感じ。

「Souls」でのゲストボーカルは、坂本美雨。
これは正直、Jamieの歌を聴きたかったなあ。
坂本美雨の声だと、この曲の場合、私の好みよりちょっと太すぎて。

坂本美雨の声が太かったので、むしろ逆に「ああ、細美さんの声って軽やかなんだな」ということに気づかされもしました。
ELLEGARDENはともかく、the HIATUSのある面(例えばこの「Souls」)のような音楽をやるにはこの声じゃなきゃダメだったのかもなあ、するとこれはすごい巡り合わせだなあ、とか思ってました。

最後に帰着するのは細美さんの”歌”

Afterglowツアーを初めて最も思ったのはこれなんですね。

これまでのthe HIATUSのライブって、細美さんの歌すらもそれは楽器とイコールでいいというような融合を僕は感じていた(感じていたかった)し、バンドや細美さん自身もそういう受け止め方をむしろ歓迎しているように見えていました。
そのスタンスをそこまで堂々と見せるバンドはあまり他に知らなくて、それがthe HIATUSの志向なんだと。

ただ、このAfterglowツアーでこれだけ楽器が増えた中で、不思議なことにむしろ細美さんの歌がすごく際立って聞こえたんですよねえ。
「いや、これは細美さんの歌がないと成り立たないツアーなんだな」と。

オーケストラ的な要素と細美さんの声の相性と言ったらそれだけで説明は終わってしまうのかもしれないし、それだけでもないのかもしれないのですが。
いくら音が増えても、the HIATUSというバンドの存在感、細美さんの歌の存在感が消えていないところが、「”バンドがやる”オーケストラ編成のホールツアー」なんだなと感じました。

ところで堀江博久さん

このAfterglowツアーが一番難解なところは、the HIATUS史上初めての試みでありながら、それが堀江さんのラストツアーも兼ねている、というところですよね。
わたしの大好きな堀江さんの。
この受け止め方、難しすぎます。

「紺碧の空に」だっけ、「Silver Birch」だっけ、masasucksが堀江さんのいる上手側まで来て、ピアノとキーボードに挟まれた堀江さんの椅子にちょっとだけ一緒に座ったりしてました。
いやあ、これは観る側としても気持ちの置き所が難しいですね…。

まだツアーの先がある名古屋でもこれだけ複雑な気持ちなんだから、東京公演の時はどうなっちゃうんでしょうね。

最高すぎて、切ない感じ。

the HIATUS The Afterglow Tour 2012.11.18(名古屋センチュリーホール)セットリスト

1.Deerhounds
2.Flyleaf
3.Ghost In The Rain
4.My Own Worst Enemy
5.The Tower and The Snake
6.Bittersweet / Hatching Mayflies
7.Shimmer
8.Broccoli
9.The Ivy
10.Little Odessey
11.Monkeys
12.ベテルギウスの灯
13.Snowflakes
14.Walking Like a Man
15.The Flare
16.Superblock
17.Insomnia
18.Twisted Maple Trees
19.Souls
20.On Your Way Home
(envore)
21.紺碧の空に
22.Silver Birch