世界の終わりのツアー追加公演、C.C.Lemonホールに行ってきた。
ライブレポというよりは、僕が世界の終わりと深瀬慧についてこれまで思ってることのまとめみたいになるかもですが。
僕はこの日で「世界の終わりはJ-POPにカテゴライズされるようになった」んじゃないかと思った。
もちろんそれは「成り下がった」という意味でも「成り上がった」という意味でもなく。

まあとにかく、今年一年の世界の終わりの躍進ぶりたるや、すごい。
だって、「EARTH」を出したのが2010年4月7日ですよ?

で、夏フェスに出まくって、この暮れにはC.C.Lemonホールである。
僕はワンマンを観るのは今回が初めて。
フェスでは生で3回観た(ROCKS TOKYO、ロッキン、RUSH BALL)。

ロッキンではウィングテントでやっていたのが、ワンマンでC.C.Lemonホール。
(ちなみに翌日は奥田民生、翌々日は岡村孝子というビッグネームの公演)
年末のCOUNT DOWN JAPANでは、2番目に大きいGALAXY STAGEでの登場である。

と、客観的事実だけでも躍進ぶりが分かる。

ここからは、僕の個人的な主観。

これまで3回観てきて、そのうちの2回(ロッキンとRUSH BALL)はメンバーの表情もよく見えるぐらい近くで観てきて、僕が世界の終わりというバンドに対して抱いていた印象。
それは一言で言えば、「怖いな」ということだった。

「何を考えているのか分からない」「感情の喪失したバンドマン」という。
それはまさに、フロントマン・深瀬慧の印象だった。

それが決定的に印象付けられたのは、RUSH BALLでのアクト。

あの時の深瀬慧は、二コリともせず、笑っているように見せても目が全然笑っていなくて、「この人はやばいな…、病んでるな…」と思ったものだった。
いちおう補足しておくと、この場合の「やばい」「病んでる」は決して批判的な意味ではなく、むしろロックミュージシャンとしては時に必要なこともある“欠損”だとは思ってる。

以下は完全に推測だけれど、RUSH BALLでは「幻の命」でも多くの観客が手を振る“ノリ”だったり、そういった観客との“ギャップ”に深瀬自身が醒めてしまった、ショックを受けてしまったんじゃないかと思ってる。

ただ、RUSH BALL(とあの場のお客さん)を擁護しておくと、世界の終わりはメインステージのトリ(サカナクション)終了後の“裏トリ”としてサブステージに出演してた。
おそらくみんな「うわー、楽しいフェスだったー!」的な感覚でいるわけで、そこで「幻の命」のような曲を正面から受け止めて感情をぐちゃぐちゃにされるのはなかなかエネルギーの要ることだとは思う。
(そういう意味では、彼らの音楽性を考えた時にあの出演順はちょっと気の毒だった)

ただ、その前日(8月28日)に行われたSWEET LOVE SHOWERでのライブ映像をテレビで観てむしろビックリした。
そこでは打って変わって「感情がちゃんとこもった」深瀬慧が歌っていたから。
その映像を観ると、「幻の命」の時とかはみんな微動だにせず聴き入ってる(受け止めてる)んだよね。
ロッキンでもどちらかと言うとそっちの深瀬慧だったように思う。
(それほどまでにRUSH BALLで観た深瀬慧は無機質すぎた)

もちろん「幻の命」で手を振るなとか、そういう単純な問題でもないとは思うけれども。

以上のような“不安定さ”は、実際、深瀬慧自身も認めている。
(「MUSICA」2011年1月号、鹿島淳とのインタビュー)

自分を見失ったり探したりっていう一年でしたね。

自分が思ってた自分って実は違う気がしてきたって思うようになって、自分を見失ってきたんだけれども……年末に来て、やっと自分っていうのが出てき始めました(笑)

この言葉を額面通り受け止めると、年末に行われた今回の公演は、深瀬慧が“本来の自分”で“安定的に”ライブをできるようになってきたライブ、ということになるのかもしれない。

で、この日のC.C.Lemonホールでの彼は「えっ、こんなに明るい人だったの!?」「こんなに明るいライブもできるの!?」とビックリしてしまうぐらいの変貌ぶりだった。
(夏までのフェスで観てきた身としては)

開演時は逆光のライトに照らされる中にメンバー4人がいきなり登場したり、アンコール後の終演時にはDJ LOVEがいきなり2階席にワープ(!)したり。
そういうエンターテイメント的な演出が似合うバンドにすらなっていた。
(まだ少しぎこちない気もするけれども)

あと、この日のライブで驚いたのは、その客層。
僕のようなフェス・ライブハウス層もいることはいるんだけど、それより女子中学生やおじさま・おばさまが多いこと!
Lastrumという彼らの(小規模な)事務所がどういうプロモーションを行ってるのか、僕は体験してないのだけど(おそらくそのターゲットとは違うから)、単純にすごいな、と。
(世界の終わりはアルバムジャケットやグッズのデザインがちゃんと管理されてるのもやけに印象的)
逆に言えば、そうでもしないとデビュー半年のバンドでC.C.Lemonホールは埋まらない。

でも深瀬慧にとっては、そういうお客さんの方がむしろ「自分の音楽をちゃんと聴いてくれてる人たち」に映るのかもしれない。
それほど、この日の深瀬慧はちょっと躁状態かと思うぐらい、明るかった。
少なくとも深瀬慧自身がハッピーだったことは間違いないんだろう。

この日のワンマンは、それがもう一番印象的で。
冒頭で書いた「J-POPにカテゴライズされるようになるのでは」というのは、そういう客層だとか、ステージでの振る舞い(逆に言えば病的要素が抜けた感じ)だとかから受けた、ざっくりした予感。

もう一つ言うと、新曲(合計3曲)のアレンジが「EARTH」の楽曲群と比べて、ちょっと凡庸な気はした。
なかじがかなり一人で頑張って編曲・レコーディングをしてる様子はいろんな媒体(テレビ・雑誌)で見かけるけど、そこに早くも無理が生まれてないかな…と勝手に心配してしまった。
その楽曲(アレンジ)の普通っぽい感じも「J-POPに近くなっちゃうのかな」と感じた理由の一つ。
(これは僕にとって少し悪い意味で)

ついでに言えば、MCで「いつか船の上でライブやりたいね」という話をした時、深瀬慧は「こんなこと今ここで勝手に言って、事務所は驚いてるかもね」と言っていた。
そこで事務所を気にすること、そもそも「事務所」という言葉が出てくることも、少し引っかかってしまった。
(僕の気にしすぎかもしれないけど)

 というわけで、曲自体についてはあまり触れてないけれど(笑)、以上がこのライブで最も感じたこと。

より詳細なライブレポートはこちらをどうぞ。
世界の終わり@渋谷C.C.Lemonホール | 邦楽ライブレポート | RO69
(セットリストもここからいただきました)

まだまだこれから変わっていくバンドだろうし、僕は深瀬慧がどうなっていくのかにすごく興味があるので、これからも観察していたい。
(うーん、「一緒に年を取りたい」というよりは「観察していたい」、だな)

とりあえず年末のCOUNT DOWN JAPANでどういうライブをするのかが気になる。

セットリスト 世界の終わり 2010.12.23@渋谷C.C.Lemonホール
1.ファンタジー
2.虹色の戦争
3.夢(仮)
4.世界平和
5.白昼の夢
6.天使と悪魔
7.死の魔法
8.不死鳥(新曲)
9.幻の命
10.青い太陽

アンコール
1.眠り姫(新曲)
2.インスタントラジオ