タテタカコのライブに行ってきたよ!
どういう風にどれだけ心を動かされたか、どこまで正確に表現できるか分からないけれど、感想を書いてみる。
単なる音楽のライブ以上の、何かとても温かいモノを感じた。それがどうにか表現できるといいのだけど…。

タテタカコのことは是枝裕和監督の「誰も知らない」で知ってから、ずーっと好きだった。
ライブも観たいと思っていて、今年のSense of Wonderでようやく初めて観られた。その時がもうイメージ通りというか、「僕がイメージしてた素敵なタテタカコ」のまんまで目の前(最前列で観てた)で歌う姿に、心がズキューン!となったものだった。

「素敵な」っていうのは、弱い心がありつつも、それを認め・向き合って、乗り越えた人だけが持ってる優しさを身に纏ってる、というような意味。

で、今回は個人的には初めてとなるワンマン。
もう楽しみで楽しみで。

ちなみにライブ前に僕が無邪気に「やってくれると嬉しいなー」と思ってたやや古めの曲は、「あの人」、「心細いときにうたう歌」、「卑怯者」、「157」あたり。
結論から言うと、この中でやったのは「157」だけだったんだけど、他の曲は今のタテタカコがやるには暗すぎるのかもね。

実際、5月に初めて生で観た時はこんなに暖かい風のような印象を感じる人だとは思ってなかった。暗い曲のイメージもあったから。
でもきっとそういう時期は越えたんだろうな。
それが素直に嬉しくもあり、またそういう時期のタテタカコを観られなかったことが心残りでもあり。

さて、ライブ。

まるでBRAHMANのように民族音楽が鳴る中、タテタカコが登場。
ワンマンの時はこれがお決まりのパターンなのかな?

「花の金曜なのに来てくださってありがとうございます」と、硬くも丁寧なごあいさつ。
長野からカバンの中に連れて来てしまったカメムシの話などしながら、鍵盤に手を置く。

その瞬間。

会場にいた人たちが、すっと背筋を正した。同じ瞬間に、僕も背筋を正した。無意識のうちに。
そう、タテタカコの音楽って、しゃんとしているのだ。だから聴いている僕たちもしゃんとしなければいけない、と思う。

生け花が慎ましく美しく飾られている和室では暴れ回ることなんてしようとも思わないように、タテタカコのライブには心地よい緊張感が流れている。
僕が生でよく観ているアーティストで同じような空気を持っているのは、Coccoなのだけれど。

そう言えば、「誰も知らない」でタテタカコを使った是枝監督が、その後にCoccoのドキュメンタリーを撮ろうと思ったのは分かり易すぎるほど分かる。

一曲目はインストの「A cloud in the far distance」。
これだけでもうタテタカコの世界。放課後の小学校に流れる寂しさと温かさが同居したような世界。
それにしても叙情性と希望の入り混じった名曲だなあ、これは。

二曲目、「157」。心の中で「いきなりキター!」と思ってしまった。
「157」は「黄昏よりももっと夜」の歌で、これまではひたすらに穏やかな宵の曲だと思ってた。
それがどうですか、ものすごくポジティブに歌ってらっしゃるじゃないですか。すっごく前向き。
これで今日のライブはこうなるんだろうな、というのが分かった気がした。同時に、今のタテタカコはこうなんだな、とも。
それは僕にとっても嬉しいことなわけです。
(ライブ盤「羊・狼」の「157」の時点でも、既にそうした歌い方になってるのが分かる)

この新宿Naked Loftはライブハウスではなく、「ライブもやれるカフェ」で、新宿の大通りの喧騒が窓ガラスと半透明のビニール越しに伝わってくる(そこがまた面白い)。

「わしらは止まってるのに、こんなに通り過ぎてる人がいる。でもわしらは出会ってる」
というタテタカコのMC。肩肘の張ってない言葉で。

次は「祝日」、「太陽」というタテタカコ的キラーチューン炸裂。
素晴らしい。

4曲を終えて、音響さんに「ちょっと返しを小さくしてください」と伝えるタテタカコ。
5月に観た時もそうだったけど(きっとずっとそうなのだろう)、スタッフさんへの姿勢がものすごく丁寧。単に「礼儀正しい」という以上のものを感じずにはいられない。
その後、お客さんへのMCで「注文の多い…(私です)」と冗談も飛び出すように。

そこから「」、「ワスレナグサ」、「」と、ややマイナー調も含まれる曲たちへ。
「渦」では声の強弱だけでドラムのようなリズムを生み出していて、歌い手としての技術も一流なことをさらっと披露。
ここらへんの曲で気づいたんだけれど、タテタカコの曲は「童謡」とか「わらべうた」に似てるんだな。

MCで、今年出た「Harkitek or ta ayoro」のジャケットの絵(画家・∀KIKOさん作)がすごく気に入っている話。
長野で5歳児から「おい、5歳児向けに『おいしい』って曲作れよ」と言われた話、など。

そこから怒涛の5連発で、「今日を歩く」、「反抗期」、「?」、「?」、最後に「祈りの肖像」。
(僕が分からなかった曲はシングルのカップリングとかかな…)

特に最後の「祈りの肖像」は凄みを感じるほどの圧倒的なパワー。
曲の終わり、和音を4つ叩く最後の最後まで、ずっと気が抜けなかった。素晴らしいほどまでに圧倒された。

みんなでアンコール。席を立つ人は一人もいない。

アンコールも、キラーチューン的な3曲。
宝石」、「やわらかい風」、「人の住む街」。

最後に「人の住む街」を持ってくるあたりがタテタカコという人をよく表しているのでは。
(個人的には最後は「しあわせのうた」あたりなのかと予想していた)
やっぱりルーツは長野なんだな。

君は今日も この街の中
僕は今日だけ この街の中

そういうことなんだろう。
でもタテタカコが東京に来るときは、いつも観に行きたいよ!
そしていつか、地元の長野でのライブも観てみたい。そこにはきっとまた違ったタテタカコに会えるんだろう。

ライブが終わってから、出口にタテタカコが立って一人一人と握手してくれていた。
いや、もうそれがものすごく嬉しくて、単に有名人とかアーティストと握手できたからというんじゃなく、タテタカコという一人の人間に(ライブとはまた違った形で)触れることができたことが。
あ、触れるって、物理的な意味とはまた違くて。

人に会えることがこんなに嬉しかったことって、最近ではあまりなかったなあ。

2011年1月に、また同じ場所で3日間ライブをやってくれるみたいで。
ぜひまた会いに行きたい。

最後に、