前編のエントリに続いて、カウントダウンジャパン後編、12/30と12/31の私的レポートです。
■12月30日(水)■
3日目。
それはフジファブリックで始まる日。
前日の夜からフジファブリックを聴いたりしていたけれど、
気分をどうやって保っていればいいのかわからない。
悲しいのか、不安なのか、自分の感情がなんなのだかわからなかった。
そして迎えた日。
フジファブリックが、志村が立つはずだったステージがどうなるのか、
あるいはその13:00からの約40分間で自分がどうなってしまうのか、
時間が迫ってもわからないままだった。
ともかく渋谷陽一さんの朝礼から聞き逃すまいと、アースステージで待機。
いつもの音楽に乗って、渋谷さんが登場。
「ここで何を話そうかずっと考えてきましたが、もう言葉は要らないと思います」
と言って、1分間の黙祷。
広いアースステージが静まりかえる。
鼻水をすする音しか聞こえなくなった。
30秒、40秒とたつうちに、鼻水をすする音が増えてくる。
僕はと言えば、泣きはしなかった。
自分が泣くというよりも、志村に対して何かを祈っていたかった。
何を祈ればいいのかはわからなかったけれども。
1分間の黙祷が終わる。
「初日も言いましたが、
このフェスが悲しくなったり暗くなったりすることを志村も望んではいないと思います」
そうだ。
そうだよね。
メンバーの意向もあり、フジファブリックが演奏する予定だった曲を、
そのままのライブ映像で流すことが告げられた。
舞台照明も、本番で行うのと全く同じに行われるようだ。
そして、渋谷さんのいつも通りの呼び込み。
「このフェスと一緒に歩んできてくれたアーティスト、フジファブリック!!」
スクリーンには、僕も生で観ていた今年の夏の「銀河」が流れ、
メンバーの楽器と志村のギターと帽子と煙草の乗ったステージには、
無数のスポットライトが降り注ぐ。
みんな、楽しんでいた。
もしかしたら踊りながら泣いている人もたくさんいたのかもしれないけれど、
フジファブリックがかき鳴らす音で、今度は鼻水をすする音は聞こえてこない。
楽しい分だけ悲しくもなるけれども、
悲しい分だけ楽しまないとねー!!と、
半分は自分に言い聞かせながら、フジファブリックのステージを楽しんだ。
多くの人は二つの大きなスクリーンに映し出される映像を観ていたが、
僕は照明に彩られたステージをなるべく観るようにしてた。
ライブ映像はこれからも観られるけれど、
フジファブリックのステージを観られるのはこれが本当に最後かもしれないから。
ありえないことを書くけれど、
普段はあんまりこういう気になったりしないのだけれど、
そうやってステージを観ていたら、そこで歌ってる志村が見えた気がしたよ。
8曲が終わって、スクリーンに志村の素敵な笑顔が映し出された。
とても楽しいステージだった。
だったけれど、やっぱり、悲しいものは悲しいよね。
なかったことにできるのなら、なかったことにしたいよね。
フジが終わってからちょっと腹ごしらえをして、時雨へ。
(そう、志村がいなくなってしまっても僕らは食べるし、生きていかなければいけない)
14:15~凛として時雨@アースステージ
誰かがTwitterでこんなことを書いていた。
「フジの後のアースの雰囲気を、時雨がぶち壊してくれ!(もちろん良い意味で)」
うん、ぶち壊してくれたよ!
すごいわ、彼らは。
僕が前に観たのは2008年だったか、
それからちょっと間が空いてるけれど、
アースという大舞台でますます混沌さを増してるかのような圧倒的な音ねー!
語り尽くされている言葉だけれど、3人でどうやったらあんな音の波を生み出せるのよ。
「音数がとにかく多くて叫ぶような高音ボーカル」
というスタイルを踏襲するバンドは他にもあるかもしれないけれど、
それらとは比肩できない、まさに唯一無二の時雨サウンド。
僕はめちゃくちゃ時雨スレイヴってほどではないけれど、
こんなバンドにハマっちゃったら中毒になって、他のバンドが聴けなくなるんじゃないかしら。
すごかったわー。
そこからしばしDJブースの保坂壮彦、木下理樹(ART-SCHOOL)へ。
保坂さんは良い意味でロッキンっぽい曲を流すねー。
けど「White Surf Style 5」でフロアが盛り上がらなかったのにはショック。
世代が違ってきてるってことなのか?
(そういやこの曲ももう10年近く前なのか)
ここでちょっとDJブースを離れて食糧補充に。
Nothing’s Carved In Stone@ムーンは見事に入場規制。
夏にレイクでやったアーティストがムーンってのは無理があるよねー。
たまたま「November 15th」が流れて、足を止めてハイになる。
そこからまたDJブースに帰還。
木下理樹はオーディエンスのことよりも自分の好きな曲をかけてる感がよかった。
最後、木下も志村のことについて触れてた。
「なんて言ったらいいかわからないんだけれど、一つ言えるのは僕は志村が好きってこと」
そして「虹」をかけてくれた。
16:45~KREVA@アースステージ
何気にKREVAのライブは2009年で4回目ぐらい。
HIP-HOPをあまり聴かない僕にとっても耳と感覚に心地よい音を鳴らしてくれる人。
とはいえ僕がライブを観るのは、
同時に彼の人間性が大好きだからでもある。
(人柄や人間性がライブを観る動機になるのは、僕の場合はとても稀)
あの話し方や振る舞いから誤解してる人もいるかもしれないが、
その“誤解”とは真逆に、とても謙虚な人だと思う。
(あの言動は、誇りやプライドの裏返しかと)
「お客さんのことをほんとによく考えてる」
「常にチャレンジをし続ける」
「謙虚で礼儀正しい」
「ただしプライドは持つ」
という点で、プロのお手本のようなひと。
今回はツアーの最中らしく、
そのツアーでも挑戦しているというヴォコーダーという楽器の弾き語りを披露してくれた。
ミュージシャンとして「楽器がひけない・音譜が読めない」というのは欠点にもなり得るし、
時にはそのことで嘲笑されたり相手にされなかったりもするかもしれない。
けれどKREVAはそれを全く隠すことをしない。
「今日も周りにはプロばかりいる中で、
俺の演奏なんて素人レベルだろうけれど、頑張ります」
そ
う言って、心を込めながら鍵盤を押さえ歌を歌うKREVA…、
かっこいいとしか言えん!!
KREVAには、毎回毎回、「あなたという人を見せてくれてありがとう」
という思いを抱く。
まあ、ミュージシャンなら音楽そのものだけでも心打たれてほしいのかもしれないが(笑)、
これは僕なりの素晴らしい褒め言葉なのだ。
考えようによっては、アーティストがあるアルバムから一気に音楽を変えてしまったら、
「昔の方がよかったのにね」
と、観るのをやめてしまうこともあるかもしれないが、
僕のKREVA観のように人間そのものが好きなのであれば、
そういうことはないわけだ。
なんかキモくなってきた気もするが(笑)、
とにかく僕は同じ男性として、KREVAって人が大好きです。
18:00~the HIATUS@アースステージ
僕にとってHIATUSと言えば、夏のロッキンの大トリ・レイクステージ。
あそこで観たHIATUSと細美武士は何かに憑かれてたかのように神がかっていた。
その鮮烈なイメージが強すぎて、
それ以降のHIATUSのライブに触手が伸びなかったぐらいで。
今回はその夏のロッキン以来の対面。
うーん、全然悪くはないのだけれど、やっぱりあれほどの「神」ではなかった印象。
(そもそも、神のようなライブなんて滅多に観られない)
彼らの問題じゃなくて、会場の広さ(僕と彼らの距離)の問題なのかもしれない。
ただ、1st以降にシングルを出して、これから第二章を迎えるバンドの「過渡期」のような
感触・予感は感じた。
という意味では、これからも楽しみにしてる。
次に機会があったら、今度は単独に行ってみたい、と思うようになった。
19:15~東京事変@アースステージ
大人だねえ、オトナ。
音がもう、大人すぎる。
音楽のことを分かってる職人が5人集まってる天才集団、的な匂い。
ただ、そのジャズっぽいノリは、アースという一番大きなステージよりも
コスモとかムーンあたりで聞きそうなテイストの音楽。
それをポップに昇華してるのは、とにもかくにも椎名林檎という歌い手のパワーだろうなー。
4人が甘すぎずにすごく良質なケーキのスポンジ部分を作っていて、
その上に甘くて大きいイチゴ(林檎という名前だけど)が乗ってる感じ。
こういう類の音楽性にして、あそこまで会場が手を振って一体になれる、
ということにすごい力を感じてしまった。
20:35~サカナクション@ギャラクシーステージ
はい、すごく楽しみにしていました。
そして、その期待すら上回る、まさに最高すぎるライブでしたよ!!
入場の1曲目イントロとしては最高の部類の盛り上がりパワーをもつ「Ame(B)」から、
もうこれ以上ないんじゃないか!ってぐらいの珠玉の名曲ぞろい。
いや、会場も僕も、ほんとに大盛り上がりだよ!!
「白波トップウォーター」「セントレイ」「ネイティブダンサー」…。
こんな楽しさは久しぶりに味わった!!というぐらいの!!
Vo.であり首謀者である山口一路さんが、
「Talking Rock!」で編集長・吉川尚宏さんにこんなことを話していた。
「メインストリームとアンダーグラウンドの間を射抜きたい」
たしかに!
僕がサカナ好きな理由もそこに集約される気がする。
そこを狙い続ける山口一路さんの企みが、
僕にも他の人たちにもピッタリとハマってるのだと思う。
もちろん、ライブがいいのもすごく大事な要素。
CDで生み出せていることがライブで生み出せないバンドも多い中、
サカナはそこも違うと再確認。
最後は、アンコールに応えて、予想通りの「ナイトフィッシングイズグッド」!!
これしかないと思ってたよ!!
ありがとう!!
としか言えない状態で、また美しくも楽しい瞬間を過ごしました。
今までの2日間もいいライブはたくさんあったけれど、
こんなライブを見せられて体験してしまったら、
もはやここまで3日間のベストアクトはサカナとしか言えなくなってしまったよ。
この限られた時間で、これ以上にベストな選曲・曲順を考えられない。
そしてこれ以上の雰囲気とお客さんもなかなかない。
サカナクションも、あそこにいたお客さんも、ほんとにありがとう。
正直、この日を迎えるまでは、
フジファブリックで自分がどうなってしまうのかわからなくて不安だった。
けれども、一日を終えた瞬間の感想は「すっごく楽しかった」。
志村さんも喜んでくれるフェスの過ごし方になったと思ってる。
そういえば、山口一路と志村は同い年だね。
山口やサカナだけでなく、全てのアーティストに改めてありがとうと言いたい。
3日目、無事にしゅうりょう。
■12月31日(木)■
この日は、僕も奥さんも大好きなCoccoがムーンのトップに出る日。
大きな集客力をもつCoccoがムーンなのは、
過度なプレッシャーを避けたいと希望したCoccoとそれに配慮して応えたJAPAN側の措置。
(詳細は「ROCKIN’ ON JAPAN」1・2月合併号にて)
というわけで、ここはまずCoccoを第一優先に会場へ。
11:00ぐらいに会場到着。
開場は12:00予定だったのがちょっと早まって11:45頃。
ムーンに直行して、見事に最前列をゲットいたしました。
そこからライブ開始まで2時間以上あるけれど、Coccoのためなら全く問題ない(笑)
ちなみに、フェスというものにはもう何十と行っているけれど、
その日のトップバッターとはいえこんなに一つのアーティストを長時間待つのは初めて。
でもそれぐらいCoccoは好きだし、彼女のライブにはいっつも心揺さぶられるんです。
14:15~Cocco@ムーンステージ
セットは、ドラムやエレキギターのないアコースティックバージョン。
そこに、長田進さん、大村達身さん、堀江博久さんと一緒に、Coccoが入場。
やっぱりやや緊張してるような感じながら、隣の長田さんと呼吸を合わせる。
そして歌い出したのは、「Raining」。
いつものCoccoの声だった。
透き通っていて、それでいて力強く。
この曲自体がもう鮮やかすぎるほどの情景を浮かび上がらせるのに加えて、
今のCoccoの心境を推し測ったりしたら、僕の中にもいろんな思いが交錯した。
続いて、「愛について」、「絹ずれ」(ウチナーグチバージョン)、
「バイバイパンプキンパイ」、「強く儚い者たち
」。
Coccoは相変わらず楽器に挑戦していて、
彼女の周りには鈴やらリコーダーやら、4,5個の小さな楽器が並んでいた。
楽曲の中で彼女の演奏パートが近づくとどんどん表情が強ばっていくのだけれど、
無事にこなして隣の長田さんに「できたぁ!」って子どもみたいに笑いかける表情は
たまらんぐらいかわいかった。
また、鉄琴を叩き始めたら、
これから叩く鍵盤の上に鈴が乗ってるもんだから慌ててそれをどかしたり、
そんなところもチャーミング。
けれど一番大切なのは、Coccoがそこで歌っていること。
前述の「ROCKIN’ ON JAPAN」で渋谷陽一さんが彼女に話していた通り、
Coccoにはとにかく歌っていてほしいと願ってしまう。
それはCocco自身にとって決して簡単なことではないのだと思うけれど、
やっぱり願わずにはいられない。
歌だけでこれだけ人の心を動かせる、稀有な歌い手なのだから。
渋谷さんもCoccoに語っていたように、
無理して行動する必要はないし、背負う必要もない。
ただ(できることならCocco自身も楽しみながら)歌ってさえいてくれれば、
僕ももうそれで十分なのだ。
救われたいのではない。
ただそれが「うれしい」ということ。
Coccoが5曲を歌い終え、
「みんなありがとうや。来年も歌います。よいお年を」
と言って帰っていったあと、周りはほとんど泣いていた。
推測するならば、それは感動した涙ではなく、
みんなCoccoのことが好きで、単純にうれしかった気持ちが強いのだと思う。
(少なくとも僕はそうだった)
とにかく、Coccoが帰れる場所は、いつでもそこにあるのだ。
あとはCoccoが帰りたいと思ってきたときに帰ってきてくれればいい。
けど、どうやら少し活動的になってアルバムも作ってるみたいで。
それもすごく楽しみにしているよ。
15:00~やついいちろう@DJブース
Coccoのあとに移動したら、入場規制中。
すごい集客力になってるなー、やつい!
なんとか会場には入れたものの、かなりギュウギュウ状態。
この状態で「survival dAnce」の“座って休憩”はちょっと無理があるかなー(笑)
とはいえ、ただ純粋に楽しかったです。
(もうちょっと踊れるスペースがあるともっとよかったけれど…)
やついがかけた中で一番キョトンとされてたのが
「LOVEずっきゅん」(相対性理論)だったのは驚き。
うーむ、客層が違うのか…。
16:45~bonobos@ギャラクシー
ゆるり。
ゆるり、と観た。
思ってた通りの心地よさ。
17:45~GO!GO!7188@アース
単独ライブに何回も行ったりするぐらい好きなバンド。
夏のロッキンでも出演した時は欠かさず観ているけれど、
その時はレイクなので、アースのような最大級のステージで観るのは初めて。
それでも立派にこなしてた。
やっぱり着実に、一歩一歩成長してるんだなー、と実感して、
なんか嬉しくなってしまった。
「親か!」と言われそうだが、彼女たちとは同い年(そしてその点もなんか親近感)。
今年はアッコの裂孔原性網膜剥離という病気もあって、
本人たち的には停滞して休息した時期があったとMCで話していたが、
ステージで観る限りはそんなブランクはちっとも感じなかった。
「その休息後、初めてのお仕事でカバーさせてもらったのがすごくいい経験だった」
と彼女たちが話すフラカンの「深夜高速」カバーはすごく響いたよ!
途中からは鈴木圭介さんが加わって!
「生きてーてよかったー! 生きてーてよかったー!」
からの
「生きてゆーく力がー その手にあるうちはー 笑わせててー いつもいつも」(こいのうた)
には、思わず涙。
にくいことやってくれるじゃないのー!
他にもライブでお馴染みの曲を並べてくれて、大団円。
終わってから気づいたけどライブでの定番曲「パンク」も「ロック」もやらなかったんだねー。
それが気にならないぐらい、
個人的には思い入れのある曲がたまってきてるバンドなんだなー。
今年、2010年の6月28日でデビュー10周年だね!
なんかやるのかな?
期待してるよ!
その後もモンパチやSuperflyなどなど観ようかとも思ってたんだけれど、
GO!GO!7188があまりに素敵にまとめてくれたので、
これにて4日間を終えることにした。
屋内フェスということで渋谷陽一さんが書いていた「無機質な空間との闘い」も、
予想以上に何も気にならず、そこにはただただ楽しい空間があった。
正直、夏のロッキンに匹敵するほどの燃え尽き症候群にかかっていて、
こんなに困るとは思ってなかったほど、今は困っている(笑)
いやー、年末にこんなフェスがあるなら、
これも毎年行きたくなっちゃうじゃないか!!
そんなわけで、
あの空間を作り上げてくれたアーティスト、スタッフ、お客さんに、
心から「ありがとう」と言いたいと思います。
ありがとう!!
そして、音楽ばんざい!!