アカメハゼと高台

アカメハゼは、高いところが好きだった。

友人のアカメハゼたちよりほんの少しだけ高いところを探すのが、
彼の日課だった。

そこで何をするというわけではない。
することと言えば、他愛もない思いごとばかり。
それも何の脈絡もない思いごとばかりだ。

「そろそろ、飯の時間だろうか」
「なんであいつは意地悪ばかりするんだろうか」
「僕がまだ行ったことのない世界は、どんな風なのだろうか」

彼は答えを求めているわけではなかったが、
高いところにいると、その答えも見つかりやすくなるような気もした。

昨日よりも少しだけ高い場所を見つけた日は、
それだけで幸せだった。

いまも再び、
アカメハゼは、高いところを探した。

高いところは、それだけ広く海が見渡せるのだった。
景色が広がるほどに、彼の心は穏やかになっていく。

つまるところ、アカメハゼは、海を眺めながら呆けるのが好きだった。
それだけで、彼の一生は満たされるのだった。