途中までは正直「今の年齢の自分にはもうこういう映画、ついていけないな…」と感じていたんだけど、中盤からは4人の俳優と呉監督の撮りっぷりに惹き込まれ、とても充実感が残った。

今の自分がついていけないと感じたクライマックスは、達夫(綾野剛)が海を泳いでいって、千夏(池脇千鶴)が後を追って、二人で抱き合うシーン。

『Cut』とかとても読んでた20代の自分を思い出したというか、その頃だったら何か別の感じ方をしていたんだろうけれど、40代になった今の自分には「どういうこと??」みたいな、超現実的な何かを見せられているような感覚しかなかった。

そのネガティブな見方が変わったのは、達夫と拓児(菅田将暉)が小さな食堂でカレーだかを食べていて、そこに拓児が千夏を呼んで3人になったシーン。

そこで3人が醸し出している自然体な幸福感を強く感じたことで、やっとこの映画が自分の中に入ってきたような感じ。
(そして同時に、ああ、これから不幸なことが起こるんだろうな、という感もヒシヒシ感じますが)

やっぱり俺のディーヴァ・池脇千鶴は別格。
今まで池脇千鶴を称えるときに『美しい人』と『ジョゼと虎と魚たち』を挙げていたけれど、今後はこの作品も加えよう。

以下のようなセリフを、尖ったトーンではなく自分自身の腹からすっと出せるのってすごいんだよなあ。

「あんた何様。一回やったぐらいで」
「あんたさあ、私と結婚でもしたいの」
「だから私みたいな女でいいんだ」

2013年の映画をいま観たわけですが、綾野剛も、菅田将暉も、俳優が一気にドンとくるときにはこういう良作との出会いがありますよね、とも思う作品。