原題は『THREE BILLBOARDS outside Ebbing, Missouri』。
ミズーリ州〜ヴァージニア州の山地(ヒル)に住む低賃金の白人労働者を示す『ヒルビリー』を描く。
ハリウッドでも取り上げられるようになって久しい黒人、同性愛、身体障害などよりも、比較的まだテーマにした作品が少ない「白人の労働者階級とその閉鎖的な地域、コミュニティ」をテーマにするというマーティン・マクドナー監督の意思は、細かなディテールからも強く感じる。
主人公ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)の戦闘着のようなバンダナとツナギ、捉えどころのない田舎の広告屋を演じるケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、この地域の生活感が滲み出ているようなディクソン(サム・ロックウェル)が母親と住む家の雰囲気…。
自分にとっては離れた国の実情、問題ではあるけれど、まさに目の前で生きた人間が行動をしているかのようなリアリティ。
(でもマクドナー監督はイギリス出身のアイルランド系というのも面白いけれど)
憎しみ、怒り、暴力が蔓延しているこの地域でも愛を説き、ディクソンにも「お前は変わることができる」と諭すウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)が持病のためにピストル自殺をしてしまうのも、残された家族を見るとやり場のない感情にさせられる。
ラスト、ディクソンと(もともとの娘を襲った犯人を探すという目的を半ば見失った)ミルドレッドが別の非道なヤツを殺しに行こうとドライブするシーン、二人は結局は何もせずに引き返した、と受け取りたい。
撮影面では、ディクソン(サム・ロックウェル)がケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)をリンチしに行くときの1階〜2階までの手持ちカメラでの長回しはすごい緊迫感だった。
現実をベースにした話で、登場する人物にも引き込まれる、好きな映画。