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2015年5月23日(土)〜25日(月)の3日間、渋谷ヒカリエで地域と生きるゲストハウスサミットというイベントをやっていました。

僕がなぜこのイベントのプロデュースを担当することになったか、などの経緯はこっちに書いたので、よかったらご覧ください。

「地域と生きるゲストハウスサミット」のプロデュースをしてます | いぬと海

このイベント、始まる前はヒカリエの8Fで閑古鳥が鳴くとかそれに近い感じだったらどうしよう……と心配もしていました。

でも蓋を開けてみれば、昼間にやっている「地域発!いいものマルシェ」にほぼひっきりなしにお客さんが来てくださって、もう胸を撫で下ろしまくりましたね。

夜のトークイベントも、3日間ともに事前販売分のチケットは売切もしくはそれに近い売れ行きで、当日券の販売も順調で、どの回もかなりお客さんが入ってました。

「地域発!いいものマルシェ」の様子

地域発!いいものマルシェの様子

地域発!いいものマルシェの様子

地域をよく知るゲストハウスのオーナーがキュレーターとなって、その土地の「いいもの」を集めて出店してもらう「地域発!いいものマルシェ」。

出店者の方々が皆さんほんとにいい方ばかりで、それは主催側である僕だけでなくお客さんにも伝わっていたと思います。

キュレーションを担当してくださったあるゲストハウスのオーナーさんの言葉が、印象的でした。

数を集めようと思えば、もっと声はかけられるし、集められるよ。
でも俺が本当に呼びたいと思ってるのはこの(いま声をかけている)人たちなんだ。

この「数は数多(あまた)あっても、その中で本当にいいものを」という精神は、マルシェだけでなく今回のイベントの奥底に共通して流れていた精神ではないかと思います。

以下、このマルシェで販売していた商品の一部です。

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

地域発!いいものマルシェの商品

ゲストハウス開業合宿の様子

どなたでも立ち寄れる「地域発!いいものマルシェ」に対して、会場の奥ではクローズドで、本気でゲストハウスを開業したい方のための「地域に必要とされるゲストハウス開業合宿」を行っていました。

これは過去5回、岡山県倉敷のゲストハウス「有隣庵」で行っていたセミナー合宿を東京で初めて開催したもの。

運営の結果にもこだわることもテーマにしていて、過去の開催回の生徒さんの中にはもうゲストハウスを開業している方もいらっしゃいます。

今回も定員20名が埋まって、追加の回がもう倉敷で予定されているほど人気になっている合宿です。

ゲストハウス開業合宿の様子

ゲストハウス開業合宿の様子

僕は主にマルシェの会場にいたので、この開業合宿には最初と最後ぐらいしかちゃんといなかったのですが、参加している方々の集中力や本気度がすごいなというのが印象的でした。

ただそれと同じぐらいすごいと思ったのが、この合宿での連帯感やチームワーク。

実際、今回のゲストハウスサミットを手伝ってくれたスタッフさんには、過去のこの開業合宿の生徒さんという方がとても多いんです。

しかももうゲストハウスを開業している人もいるのに、そのゲストハウスを土曜〜月曜まで他のスタッフに任せてでもこのイベントを手伝ってくれる、っていう方もいました。

これはまさに、この開業合宿の講師でもあり今回のイベントの主催でもあるゲストハウスのオーナーさんたちが「与えられるものは与える、力になれることは力になる」という信念でこれまで行動してきたことの証なんだと思います。

実際、この開業合宿の終わりには、生徒さん同士で「みんなが開業することになったら必ず手伝いに行くから!」という声が自然発生的に生まれていました。

今回のゲストハウスサミット自体の開催目的である「ゲストハウス同士の横のつながり」という趣旨が、もうこの時点から継承されているんだなと感じます。

トークイベント

3日間にわたってそれぞれ異なるスピーカー、テーマで行ったトークイベントも、どの回も盛況でした。

地域と生きるゲストハウスサミット、トークイベントの様子

3日目のトークイベント「greenz.jpと語る、地域とゲストハウスの未来とは」の様子

3日目のトークイベント「greenz.jpと語る、地域とゲストハウスの未来とは」の様子

3日目のトークイベントに登壇していただいたgreenz.jp編集長・鈴木菜央さん

3日目のトークイベントに登壇していただいたgreenz.jp編集長・鈴木菜央さん

トークイベントそれぞれについて内容を紹介したり感想を述べたりしていくと長くなりすぎるので割愛しちゃいます。

ただどのトークも「地域」と「ゲストハウス」をキーワードにして、「2015年の今だから語ることに意義がある、けれどこれまでほとんど語られてこなかったこと」という点は一貫していたんじゃないかと思います。

出会ったたくさんの人たちと言葉と価値観

ゲストハウスを紹介するパネルを撮影してメモするお客さん

ゲストハウスを紹介するパネルを撮影してメモするお客さん

以上のようなこのイベントのコンテンツをほぼ滞りなく実施できたのは、ひとえに運営スタッフのおかげです。

いやほんとに、今回のイベントは運営側スタッフ、あるいはボランティアで協力してくれたスタッフのエネルギーや献身的な働きっぷりが素晴らしかったんですよ。

「開業合宿の様子」のところでも書きましたが、過去に開業合宿に参加してくれた方だとか、主催である有隣庵にこれまで関わってくれた方だとかが、場合によっては自分の仕事を放ってでも手伝いに来てくれてるんですね。

それは紛れもなく、有鄰庵というゲストハウスがオープンから3年でいろんな人たちに何かを与え続け、その結果として今度はその人たちが有鄰庵(やそのオーナー・中村さん)に恩返しをしたいと思っている、ということなんだと思います。

協力してくれたボランティアスタッフの一人

協力してくれたボランティアスタッフの一人

ただ、これだけボランティアでたくさん手伝ってもらった中でプロデューサーの立場から言えることでもないかもしれませんが、手伝ってもらった人にも多くのものを持って帰ってもらえたイベントであり3日間であったんじゃないかと思います。

その持って帰ってもらえたものというのは、堅く言えば経験、そして特に人脈です(柔らかく言えば、同じ志をもつ仲間との繋がり、でしょうか)。

これだけスタッフが同じ向きを向いているイベントは珍しいぐらいに感じますし、そんな気持ちを共通して持つゲストハウス同業者、ゲストハウスが好きなお客さん、これからゲストハウスを開業しようとしている人、各地域でものづくりや事業をしている人、メディア関係者……、などがごちゃっと知り合えたのは貴重な場だったんじゃないかと思います。

会場の設営の様子

会場の設営の様子

協力してくれたボランティアスタッフの中で、20代の男子が話してくれたことがとても印象に残っています。

2日目の後のスタッフ懇親会で、フリーターの彼はお金があんまりなくて日雇いの仕事をしてるっていう話をしていて、そんな彼に僕は冗談交じりに「じゃあこんな手伝いをボランティアでやってる場合じゃないんじゃない?(笑)」って投げかけてみました。

そしたら彼は、「この手伝いは、短期的なお金なんかよりも自分にとって得るものがずっと大きいからいいんです」って返してくれました。

彼が感じていることはまさにその通りだと思いますし、(自分、大人っぽいくだらねえ冗談を言ったな……)と反省しながらも、同時にこうやって自分にとって大切なものが何かを分かってる人は成長するんだろうな、と思いました(って本人にもその場で言ったんですが)。

いや、でもなかなかこういうスタッフが揃ってるイベントってないと思いますよ。ほんと。

地域と生きるゲストハウスサミットの様子

このイベントを通して僕が学んだこと

このイベントは、もともとは有鄰庵のオーナーの中村さんが年明けぐらいに「こういうイベントを渋谷のヒカリエでやりたいなあ」と僕に言ってきたところから始まりました。

その時点では、そう言う中村さん自身も「ほんまにできるんかな」と心配だった部分もあると思います。

ただ、そうやって「ちょっと無理めなこと」でも「やりたい」と口にして、周りを巻き込みながら実行していく人のところに人って集まるんですよね。

スタッフ打合せ中の有鄰庵オーナー・中村功芳さん(右)

スタッフ打合せ中の有鄰庵オーナー・中村功芳さん(右)

また、普段はゲストハウスにそこまで触れていない人間だった僕自身も、たくさんのことを学ばせてもらいました。

それは一言で言うと、「ゲストハウスは人の人生まで変えられる」ということです。

これまで「ゲストハウスって何?旅館やユースホステルとどう違うの?」と訊かれた時に「お客さん同士、もしくはゲストハウスのスタッフやオーナーとお客さんとの交流やコミュニケーションがあるのが一番の特徴」と答えていました。

ただ、それだけではまだ100点の答えではなくて、その交流やコミュニケーションの結果、その人の人生まで変えてしまったり、人生に大きな影響を及ぼしたりすることもある、というところまで言えるんですよね。

有鄰庵の仕事を手伝うようになって、そういう風に「ゲストハウスで人生まで変わった人」と出会ったり、今回のイベントのようにゲストハウスとそこに集まる人たちを中心に大きなうねりのようなエネルギーが生まれるのを見たりして、とても勉強になったというか、それはもはや感動に近いものがありました。

今回のイベントについて、2日目のトークイベントにも登壇いただいた鎌倉のゲストハウス「亀時間」オーナー、櫻井さんが以下のようにブログに書かれていました。

有鄰庵の中村さんが、もともとこのイベントを開催しようと思ったのは、ゲストハウスが全国に増えてきて、流れに乗るだけで中身の伴わない宿が乱立することで、一過性のブームで終わってしまうことを危惧してのこと。ゲストハウス開業合宿も同時開催していましたが、せっかく開業するなら繋がりたいと思う素敵な宿になって欲しいからという想いを語ってくれました。

(略)

そして、「日本のゲストハウス=ラーメン説」をここで唱えたいと思います。ただお客様を泊めるだけでなく、地域と繫がりながら、個性を出してお客様にもプラスアルファの体験を提供するゲストハウスという存在は、もはや世界のスタンダードを超えて日本独自に発展してきており、「ゲストハウス文化」として確立されつつあるのではないでしょうか。それはあたかも中国文化であった中華そばが、日本の風土で独自に発展し、「Rahmen」として世界に輸出されている様を想起させます。

満員御礼、5月24日ゲストハウスサミット報告 | 亀時間 ~鎌倉材木座のゲストハウス~

有鄰庵の中村さんは、よく「その地域の風土をつくる」という話をしています。

風というのはその地域に旅をしてきた人。
土というのは、その地域に住んでいる人。

その人たちが掛け合わさることでその地域の風土は生まれ、そのためにはゲストハウスというのは最適な場所なんだと。

日本のいろんな場所で、こうして地域に根ざしたゲストハウスが増えていくことは、必ず日本を豊かにしていくことに繋がると、僕自身も確信を持てた3日間でもありました。

皆さん、本当にありがとうございました。