日本対ギリシャ
Japan-Greece Liveより

初戦を落としてしまった日本、ここは負けたら敗退が決まる一戦。
4時間前に終わったコロンビアvsコートジボワール(2-1)の結果を受けると、できれば2-0以上で勝っておくのがベスト。
テンション高かった後半のせめぎ合い コロンビア対コートジボワール 2014.6.19 | いぬと海

日本対ギリシャ

ここからは、0-0の引き分けという結果があったことを踏まえて振り返ってみます。

森重に代わって今野を左センターバックに入れたことはザッケローニ監督の良い判断だったと思う。
今野については精神的な落ち込みを勝手に心配しちゃってたけど、この試合では攻撃も守りもアグレッシブにできていたし、特に攻撃面では左サイドで起点になれていた。

これは前半45分までの今野のパスの統計。
前後半90分を合わせても、今野のパス本数は67/75で、日本では山口螢(79/85)に次いで2位を記録している。

今野泰幸のパス統計(対ギリシャ)

試合は、ギリシャの中盤の▼と日本の中盤の▲がぶつかり合う形。
基本的にはアンカーのカツラニスがトップ下の本田を見て、マニアティスとコネがそれぞれ対面の山口と長谷部を見る感じ。

ただ、上で書いたように今野と吉田を加えたパス交換でマークを外せたりするので、カツラニスの横のスペースを使うことができていた。
(ちなみにサマラスとフェトファツィディスは日本のサイドバックを見る形)

これはハフィントン・ポストが解析してくれているデータ図。
カツラニスの横のスペースを使うために、そこに選手が集まっていることが分かる。

前半は守りから入るギリシャに対してそれなりに攻撃がスムーズにいっていたので、会場のお客さんも日本びいきに。

ギリシャは怪我明けのミトログルが途中で脇腹(?)を痛めて、ゲカスに交代。
大会前のテストマッチや初戦のコロンビアも観ると、やっぱりゲカスの方が試合の中での貢献は少ないし、最近は決定的なチャンスも決め切れてない。

そして試合の鍵になった退場。
まあ、相手が10人になることは基本的には悪くないことだけれど、10人になったのがよりによってギリシャだった、っていうのが。

実際、日本の守備は綻びを見せることがあるし、セットプレーは脅威。

カツラニスの退場によって、フェトファツィディスもいなくなることに。

終わってみて思えば、最近は流れを変えるための途中出場が多かったフェトファツィディスをスタメンで起用してきたのは、やっぱり攻撃面への意識が高かったってことだろうし、退場でその槍を収めて守備一辺倒でOKってなっちゃったことは日本にとってアンラッキーだったのかもね…。

ハーフタイムで「ドン引きの相手をこじ開ける戦いは、アジアで中東相手にしてきたでしょ」とはツイートしたものの、まあこれは半分は期待を込めてであって、やっぱり中東の国であればどこかで守備のミスを何度かしてくれるところを、ギリシャは最後まで組織的なミスはしてくれなかったんだよな…。

これは日本のクオリティにも問題あるけれど、ギリシャの守備もレベルが高くてそこは称えるべき、とは思う。
だって、もう10年前ではあるけどこの守備でヨーロッパを制した国だからなあ。

ハーフタイムから遠藤が入って、日本はよりサイドに散らせるようになる。
まあギリシャもすっかり重心は低くなってるから、遠藤へのプレッシャーも緩くて、そこまでは展開できるよね、っていう試合に。

さらに、香川を投入。

ただ、ここで一つ目の疑問は、1トップは岡崎なの?ということ。
マインツの1トップで求められている仕事と、このギリシャ戦、相手がドン引きの試合の中で1トップに求められる仕事は、全然違いますよね。
そもそも裏に抜けるスペースなんて、とっくに無いし。

岡崎の1トップは13年2月のラトビア戦や6月のブラジル戦で試されたが、機能したとは言いがたい。そのラトビア戦のあと、指揮官自ら認めている。
「岡崎は常に良い仕事してくれて、このチームの得点王になっている。彼の最適なポジションはセカンドトップであり、センターフォワードが作ってくれたスペースに飛び込む場面で彼の良さが出る。センターフォワードではDFを背負うプレーが多くなるが、セカンドトップならゴールに向かうことができる。これだけ得点能力がある選手なので、ゴールに向かいながらプレーするとき、彼の良さがさらに出る」
ザック采配の納得のいかない疑問(THE PAGE) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

大迫を下げるにしても、まだボールを受けられてそこからリターンや切り返しができる大久保の方がよかったんじゃないか、とは思う。

日本は内田が覚醒モードに。
本田のプレーはスローだし、香川もPA付近ではボールを受けられないし、途中からもはや内田のチームになってたぐらいの勢いだわ。

最後のあたりはもうツイートなんてする余裕はなかったんだけど、結局0-0で試合終了。

パワープレーについては少し後で語るとして、とはいえ無得点の根本的な原因は、前半に1点を取り切れなかったこと、もしくは後半に守りに入った相手を崩し切れなかったこと、だと思う。
パワープレーの時間帯なんて、90+α分間の中で、せいぜい5分間ぐらいしかないわけだから。

そういう意味では、総括的な意味では以下の吉田と長谷部のコメントの通りでは。

前半からボールを左右に振って相手の前線を動かして疲労させて、後半に畳みかけるやり方は間違っていなかったと思うし、少しの差で1点でも2点でも入ったと思う
吉田:「やり方は間違っていなかったが…」(GOAL) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

シンキングスピードやオフザボールのときの動きやスピードが足りなかった。10人のギリシャを崩し切れなかった。崩し切れなかったのは自分たちの攻撃がまだまだ足りないということ
コロンビア戦に向け気丈な長谷部「自分がリーダーシップを取っていく」(ゲキサカ) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

終盤のパワープレーについて

上でも書いた通り、これは無得点の本質的な要因ではないけれど、まあ話題にもなってるので、自分の意見を。

初戦のコートジボワール戦でのパワープレーは、僕は「あの状況だったらアリ」と書きました。

ところで終了間際の、吉田麻也を前線に上げてのパワープレーは、僕は「あの試合の状況では、あれもアリ」だと思ってます。
まずその試合のそれまでも、そしてパワープレー後の結果論としても、日本はコートジボワールに対してエアバトルでは勝っていた、ということ。
ちょうどFourFourTwoがツイートしてたんだけど、一試合を通してのエアバトルは日本は25戦13勝で、特にコートジボワールのPA内では3戦3勝、コートジボワール陣内では13戦8勝だった、と。

コートジボワールもドログバを吉田につけるということはしていなかったから、CBのバンバのところさえ避ければ、相方はゾコラだし、両SBの身長も低いし、ギリシャ(マノラスとパパスタソプーロス)とコロンビア(ジェペスとサパタ)のCBセットに比べれば、このグループリーグで守備陣に最も高さがないのはコートジボワールなので、パワープレーをするならこの試合、っていうのは理解できる。

そして繰り返すけど、パワープレーから「ひょっとしたら」っていうチャンスの芽は少しだけ見えたし、もうあの状況でそれまで85分間何もできなかった繋ぎによる崩しを狙うよりも、(とても残念だけど)現実的に可能性は高かったんじゃないかと思う。
全く釈然としない消極性 – コートジボワールvs日本 2014.6.14 | いぬと海

ただ、この試合のこの展開では、「あれはない」と思います。
ギリシャに高さがあるってことはもはやワイドショーのワールドカップ特集でも伝えられてるようなことで、そもそもあの時間帯にギリシャがやられて嫌なことは何か?ってことですよね。

守備組織にミスはないと言っても、足がどんどん止まってきたギリシャに対して、挑むべきは細かいパスワークかドリブルでの仕掛けでしょう。

194cmのハーフナー・マイク(フィテッセ)、185cmの豊田陽平(サガン鳥栖)の両FWの招集を見送ったことに対して、指揮官は5月12日の代表メンバー発表の席でこう説明している。
「日本サッカーに空中戦の文化がさほど入っていない。幼少のころからボールを大事にする教育をされたメンバーが多く、空中戦の成功体験を持っていない。残り15分で空中戦を具現化するのは難しい」
なぜザックは3枚目のカードを切らなかったのか?(THE PAGE) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

Q:W杯前にパワープレーはしないと話していたが、今日も最後に吉田を上げてパワープレーをしようとしていたが、それは選手の判断か?
「いいえ。このチームは、4年間同じ方向で進んできた。テクニックを使い、速攻で攻める。相手には入る隙きを与えないことで、4年間成功してきた。なので、W杯に対し、このような形でアプローチするのは当然で、最終段階で変えるのは適切ではないと思う。もし変えるなら時間が必要だった」
ザッケローニ監督「もっと得点が入ると思っていた」(ISM) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

特に試合後の会見で、このパワープレーについての質問に対してのザッケローニ監督の答えは「ええ!?これ、翻訳ミスとかじゃないよね!?」っていうぐらい的を得ていないというか、もはや質問に対する答えになってない。

遠藤のコメントにも戸惑いの感は隠せない。

麻也に上がれという指示があるのであれば、明確なパワープレーだと思うので、それはそれで切り替えてやるしかない。手っ取り早い方法だと思いますけど、パワープレーは紙一重なので、逆にセカンドボールを拾われて時間を使われることもあるから、相手を押し込んだ上でクロスを上げないといけないのかなって思うし、そこはもう、今からどうこう言っても始まらないので、やるならやるで割りきってやる必要がある。ただ、自分たちがリードして、パワープレーをやらずに90分終わらせるのが理想
ザック采配の納得のいかない疑問(THE PAGE) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

左サイドからのクロスとピッチの横幅の使い方について

パワープレーは最後の5分間のことだけれど、それよりも手前の時間帯、後半途中から長友の単調なクロスと、それにも関わるピッチのワイドな横幅の使い方の方が気になりました。

単純に、縦に突破しての左足でのクロスはDFも戻りながらになるから分かるんだけど、そこが詰まった時に右足で巻いて蹴るクロスはかなり無理があるんじゃない?っていう。

右足からのクロスは全くチャンスに結びついていないし、少なくとも逆サイドの内田はその選択自体をしていない。
その判断の鈍さ(誤り)は気になった。

で、長友のコメントを読むと、「いや、そういう問題じゃないっていうか…、この試合で語るべきはそこじゃないんじゃ…」っていう感が。

上げる選手と、中の選手のタイミングもあるし、これからの3日間でコロンビア戦に向けて突き詰めていかないといけない部分かなと思う。代表はサイド攻撃が強みでずっとやってきたので、最終的な部分、クロスにどういう形で入っていくのか、何人入っていくのかというところを突き詰めていきたい
長友佑都「自爆したなと」/日本代表(ISM) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

本田はそこをやや婉曲に匂わせているけど。

正直にサイドからボールを上げるだけでは、中の(競り合いに)強いセンターバックに対して競り勝つのは難しい状況でした。違う形でゴールを破るというのが、今日は欠けていたと思います
試合後に表情をこわばらせる本田。「何か1つアイデアが足りなかった」と、創造性の欠如を嘆く(Soccer Magazine ZONE web) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

もう一つは、後半の途中から、真ん中にまず当てて、DFラインを中央に寄せてからサイドへ、もしくは逆にタッチライン際から中央に戻してお得意のコンビネーション、ていう流れもできていなかった、っていうこと。
これは大迫がいなくなったことで(よりによって)その役割が岡崎になった、っていうことと、あとは上で書いたようにサイドから簡単に上げてしまうこと、日本の問題としてはどちらも関係していると思う。

とはいえこれはもちろん相手がいることで、選手間の距離にほぼ乱れのないギリシャの守備は流石。
日本がもっと左右に揺さぶれていたとしても、あれを崩すのはなかなか至難の技だし、そしてそれを上回る攻撃をできるチームではなかった、ということ。

(相手が10人になったが?)よくあるじゃないですか、サッカーって。相手が10人になって、向こうがはっきりした。しかもそれがギリシャの戦い方なので。縦パス何本か入れて取られる悪いイメージはありました。だからそこは気を付けていたんですけど。みんなが前に前にってときは一番危ないですね。今日はボール回しの時にお客さんがワーワーワーワー。ああいうリズムは好きなんですけど、ああいうときが一番危ない。
内田篤人「前に前にってときは一番危ない」=サッカー日本代表(スポーツナビ) – ブラジルワールドカップ特集 – スポーツナビ

日本選手の中では、内田のコメントがこの試合の難しさを最も率直に捉えられてるんじゃないかと思う。

上でも書いたけど、10年前にユーロ2004を守備で制したギリシャが、その後に色気を出して攻撃の構築にも取り掛かってみたけれど、この大舞台で「攻撃はもう無理だから諦めて守備をしなさい」という天からのお達しを受けて守備のDNAを思い出しちゃった感じ。

どうでもいいけど、この試合のマン・オブ・ザ・マッチは本田だったみたいで。
いやいや、内田か川島でしょ。

って、ここで川島が挙がる時点で、チャンスはギリシャにも多かった、つまりボール支配率の割に日本は対してギリシャを脅かせていなかった、ってことなんだけれど。

試合直後のインタビューで、本田は明らかにショックを受けていた(落胆していた?責任を感じていた?)のに対して、内田の受け答えは前向きかつ理路整然としていた。
メンタル(心の強さ)の部分もそうだし、頭の思考整理スピードが速いんだろうな。

まあ、まだワールドカップが終わったわけじゃないし、決勝トーナメント進出の可能性が消えたわけじゃない。

ただ、コロンビアはギリシャ戦、コートジボワール戦を見る限り、選手全員がサッカーを分かっているというか、サッカーIQがすごく高いんだよなあ。
しっかり守られ、かわされ、カウンターでちぎられる、とかいう展開にはならないことを祈るのみです。

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