前日に続いて、the HIATUSの「A World Of Pandemonium Tour」に行ってきました。
前日の雑感はこちらをご覧ください。
the HIATUS A World Of Pandemonium Tour 2012.1.24 Zepp Tokyo – いぬと海
前日は、フロントエリアの左横、堀江さんの前あたりのポジション。
この日は、それと対称的にフロントエリアの右横、細美さん前のポジション。
このポジション、一番手前の細美さんから奥に向かってmasasucks、ウエノさん、堀江さんがずらっと並んで、しかも柏倉さんまで見られるというなんかとてもいいポジションだった。
特にHIATUSのライブで柏倉さんのドラムをちゃんと観たいとはずっと思っていて「おお、ここかなり見えるわ!」と嬉しかったです。
柏倉さん、なかなか叩いてるところや表情を見られないんだよねえ。
で、人間というのは現金なもので、視覚的に柏倉さんが目に入ると、そのドラムの響きも昨日とはまた違った形で聞こえるんです。
この日のわたしの大きなテーマの一つは「柏倉さんと堀江さんはやっぱり即興的なアレンジもしてるのかどうか」を聴いてみることだったんだけど、そんな単純な比較って難しいなあ。
結果から言えばやっぱり即興は多いとは感じたんだけど、でもそれよりその時の音が自分にどう響くかの方がよっぽど大事。
セットリストは、前日と一緒でした。
the HIATUSセットリスト A World Of Pandemonium Tour 2012.1.25 Zepp Tokyo
1.Deerhounds
2.Superblock
3.The Tower and The Snake
4.Bittersweet / Hatching Mayflies
(MC)
5.The Flare
6.Monkeys
7.Broccoli
8.My Own Worst Enemy
(MC)
9.The Ivy
10.Twisted Maple Trees
11.Insomnia
(MC)
12.Souls
13.Flyleaf
14.Snowflakes
15.Shimmer
(MC)
16.On Your Way Home
(encore1)
17.紺碧の夜に
(encore2)
18.ベテルギウスの灯
(encore3)
19.Storm Racers
以下、ライブ終演後の僕のツイートを交えながら。
HIATUSのライブ。その日ごとにも音は違うし、どの音に自分がフォーカスを当てて聴くかでも全く違う。「同じライブは二度とない」って当たり前のように言われるセリフだけど、HIATUSはその言葉を本当の意味で思い知らせてくれるわ。
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
「観る視点によって全く違う像になるけれど、どれもが同じHIATUSである」ってことを感じて、ふと今のHIATUSのアーティスト写真が浮かんだ。あの写真はピカソがやった技法(一つの絵の中に複数の角度からの顔を混ぜる)と同じだけど、それこそまさにHIATUSを表してるんだなあ、と。
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
–5色のボール–
前日の雑感でも書いたけれど、やっぱり僕はHIATUSのライブ中に5人が投げかけてくる音を拾って受け止めるのに必死なわけで。
例えて言えば、5人が5色のボールを一斉に投げてくるんだけど、僕の手は二つしかなくて、認識として「ああ、5色のボールが飛んでいる」という把握はできても受け止めきれない、という感じ。
別に音楽的な才能があるわけでもない僕にはそのすべての音を拾うのは無理で、そうなると「何を受け止めたか」によってその瞬間のHIATUS像は変化することになる。
他のバンドの場合、たいてい音源を覚えていて、その音を脳内で補完するからそこまで「違う像」にはならないんだと思う。
それはステージ上で「ミュージシャン」というよりむしろ「プレイヤー」になってる、ということなのかもしれない。
(ここらへん、詳しくは昨日のエントリをご覧ください)
ただHIATUSの場合は個々人がミュージシャンとして思いもよらない音であったり、他であまり聞かないような音であったりを発してくるから、こっちもその都度新鮮な心構えで受け止めなきゃいけなくなるのだと思う。
それで思い出したのが、今回のアーティスト写真。
(ナタリー – the HIATUSのニューアルバム収録曲&ジャケット公開より)
これって「一つの絵の中に複数の角度からの顔を混ぜる」っていうピカソで有名な技法(キュビスム)を写真の中で表現したもの。
このthe HIATUSの写真の表す意味が、ライブだと直感的・感覚的に分かるということなんだな。
つまり、「観る視点によって全く違う像になるけれど、どれもが同じHIATUSである」ということ。
–細美武士さんとジェットコースター–
って具合に音楽に関する雑感を昨日のようにまた書こうかと思ってたんだけど、この日は細美さんについて書かざるを得ない。
ライブ序盤は昨日のように、また主に「ANOMALY」ツアー以降と同じように、ステージをすごく楽しんでいる様子だった。
このMCは8曲目、「My Own Worst Enemy」の後に話していた言葉。
今日の細美さん1「もうめちゃくちゃ気持ちよくて、でもこれはあっという間に終わっちゃうなと思って。どうしたら時が進むのをゆっくりにさせられるかを考えてた(笑)」
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
ちなみに、この前にも2曲目「Superblock」の後だったかな、「今日はいかついなあ!昨日とはまた違う感じでこれもいいよ!」と言ってた。
僕が細美さん側にいたこともあるのかもしれないけれど、フロントエリアが今日の方がいかつい(≒激しい)というのは感じた。
同じHIATUSのライブでも、1日違うだけでけっこう違うんだなあ。
そんな楽しいモードの細美さんだったんだけど、本編ラストの「On Your Way Home」前あたりから、ダウナーなモードに。
今日の細美さん2「今日ふと考えたんだよ。俺、こんなにダメな奴なのに、なんでこんな仲間に恵まれて、たくさんのお客さんがいて、素晴らしいスタッフがいるんだろうって。俺、いいところなんて何一つないんだよ(続」
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
今日の細美さん3「それでこれはどうにかみんなに気持ちを返さねばなんめえと思っていろいろ考えたんだけど、俺にできることなんて何もないんだよ。だから一所懸命、精一杯歌うことにしました!」
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
〆はポジティブな結論に結び付けるのだけど、僕が見る限り、こんな細美さんは久しぶりに観た。
「ANOMALY」ツアー以降の細美さんはワンマンでもフェスでも、あるいは雑誌のインタビューでも、いつもとても楽しそうで。
音楽をやれる喜びに充ち溢れているようで、僕もそれがとても嬉しかった。
それだけに、こういう崖っぷちにいる細美さんを見たのはとても久しぶりだった感覚。
これは1つ目のアンコール、「紺碧の夜に」前のMC。
今日の細美さん4「今日決めたんだよ。歌わせてくれる場所があって、聴きたいと思ってくれる人がいるなら、俺、一生歌い続けようって。うわー、これ言うのかなり覚悟いるんだぜ(笑)段々おっさんになって頭も薄くなるかもだし、腹も出るし、そのうち加齢臭もし出すだろうし。覚悟要るんだからな!」
— いぬたくさん (@inutaku_) 1月 25, 2012
そしてこれは2つ目のアンコール、「ベテルギウスの灯」前のMC。
今日の細美さん5「あー、バカだな、俺、なんでこんなにバカなんだろうな。こんなに心通じ合える人たちがいるのに、俺は一人なんじゃないかって思っちゃうんだよな」
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
ここらへんになるともう細美さんの目が潤んでいて、フロントエリアからも「今日は泣いてもいいんだよ!」という声が出るようになってた。
そして3つ目のアンコール、「Storm Racers」。
今日の細美さん6「身長168cmのチビな俺の体には、この感謝の気持ちは収まり切りません!」
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
アンコールは毎回まず細美さんが一人で出てきて話すんだけど、この時にステージ袖を見て「変な人たちがいる(笑)」と言ってた。
何かと思ったら、他の4人が全員頭に白いタオル巻いてて、その姿のまま登場。
いや、やっぱりHIATUSって本当に素敵なバンドだと思いましたよ。
前に「ROCKIN’ ON JAPAN」誌のインタビューで細美さんがこんなことを話してたことがあった。
「ステージ上で一瞬気分が落ちることがあって、それが今のメンバーには筒抜けで。あるライブ中に後ろから柏倉さんが『大丈夫』って言ったような気がして、後で訊いたらやっぱりその時に勘付いてそう言ってくれてたみたい」
そのインタビューがいま手元にないので、原文ママではないけど、話の筋としてはこんな感じだった。
この日の白タオルも、そういうことだよね。
Twitterでは「ウエノさんの白タオル萌え」的な反応が多かったけれど、わたしが心揺さぶられたのはHIATUSというバンドの優しさ・温かさだなあ。
世の中、分かりやすいバンド・分かりやすい優しさに注目が集まりがちだけれど、わたしはthe HIATUSって音楽的な才能の集まりであると同時に、すごい人格者の集まりでもあると思う。
昨日のライブから「HIATUSってバンドはアルバム毎にライブごとに全く違う変化や進化をするよねえ」という話を何度も言ってるんだけど、むしろ細美さん自身がジェットコースターのような毎日を過ごしてる、その起伏の方がよほど激しいのではということをこの二日間自分の目で確認できた。
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
細美さんのそんな感情の揺れが激しいところも大好きです(でも以前よりほんとに安定してると思う)。
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
今回は二日続けて観ることで、なおさら細美さんのジェットコースターっぷりを目の当たりにした。
ただこういうことって、地方をツアーで回ってる時に今でも日常的に起こってることなんだろうなあ。
そしてわたしはこういうめんどくさい人間がとても好きです。
–歌う–
もう一つ、細美さんの話す言葉を聴いて、改めて思ったこと。
バンドのボーカル・フロントマンっていろんなタイプがいるけれど、わたしは細美さんのいつも「歌う」ということに帰着するところが大好きです。
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
細美さんにとって、ファンに応える行為って常に「歌う」ことなんだなあ、と。
そこの表現って、バンド(フロントマン)によって、いろいろバリエーションがあると思うんですよ。
・音楽をやっていきたい
・音楽を届けたい
・音を鳴らしたい
・愛したい
・一緒に騒ぎたい
などなど、無限にありますよね。
で、そこの表現に関して、細美さんっていつも「歌う」って言うよなあ、と。
そこが好き。
この時代にバンドができることって音楽や歌うこと以外にもたくさんあるけれど、わたしはバンドのボーカルだったらまず何よりも「歌」を求めたい。そしてやっぱり歌に向かってひたすら進んでいる人の歌は、他の人とは違う響きで聴こえると思う。そういうの、観てる側には絶対伝わるから。
— いぬたく (@inutaku_) 1月 25, 2012
どんな人でも1日って24時間しかないわけで、その24時間に「歌う」ことばかり考えている人と、それ以外のことも考えなきゃいけない人とでは、「歌」に関してはやっぱり違いが出てくるとは思うんです。
細美さんが3rdで新しい歌い方・発声域に挑んでいるのも、それの表れとしての進化だと思うし。
そういう人の歌って、やっぱり生で聴いた時の伝わり方って違うと思うなあ。
だから心が引き寄せられる。
長々と書いたけど、要は僕はthe HIATUSというバンドも大好きだし、ボーカリストとしての細美武士・めんどくさい奴としての細美武士も大好きだということでした。
大好きです、このアルバム。