ちょっと間があいてしまいましたが、
水中映像について僕が思っていること、Vol.2を書きたいと思います。
Vol.1は、こちら。
ごくごく私的、水中映像論Vol.1
Vol.1では、基本的な三原則を書きました。
ただ、ところどころは抽象的な言い方になってしまったので、
ここではもうちょっと具体的な点を書いてみます。
1.音楽選びに時間をかけてみる
Vol.1で「映像は、絵と音で決まる」ということを書かせてもらいました。
そう、すごく単純な話、絵と音しかないのです。
みなさん、水中写真(水中映像)はほんとにお上手なんですよね。
だったらそれと同じぐらい音楽のことも考えると、
もっとよくなるのではと思ったりしました。
「音楽のことを考える」って、じゃあ具体的にどうしたらいいか、と。
もちろん、制作者の音楽的嗜好が混じるのは当たり前だと思います。
ただ、それと同時に、Vol.1で書いたメッセージとターゲットのことを
ちょっと思い浮かべてみるといいかと思うのです。
例えば自分が好きな音楽を使うとしても、
「この音楽を使ったとき、女性(あるいは男性)はどう思うだろう?」
「この音楽、子どもはどういう風に感じるだろう?」
などとちょっと思いめぐらせてみるといいかもしれません。
写真を撮る&セレクトするのと同じぐらいの時間をかけて、
音楽をセレクトするぐらいでもいいかと思います。
だってやっぱり、映像には絵と音しかないですからねー。
それだけ音楽というのは「考え甲斐のあるもの」だと思うのです。
2. 映像演出効果を多用しない
映像編集ソフトには、いろんな演出のエフェクト機能がついています。
場面の切り替えでいろんなアニメーションができたり、
写真を回転させてみたり…。
ついついこの機能を使ってみたくなってしまう気持ちは分かります。
ただ、その機能をつかうとき、あるいは一つのエフェクトを入れるとき、
「その場面に本当に必要なものなのか」
「その映像の趣旨に本当に合致しているものなのか」
を、ちょっとだけ振り返ってみてください。
「こういう狙いがあるから、こういうエフェクトを入れよう」
と考えられたものは、ちゃんと人の心に響くと思います。
しかし、「とりあえず入れてみよう」で入れたエフェクトは、
見る側からすれば「なんか素人っぽい…」と映ってしまいます。
安易な映像演出は、けっこう両刃の剣なのです。
3.1フレームの差にこだわる(特に音楽面)
これは特に音楽と合わせたときの話です。
1フレームというのは、1/30秒のことです。
映像はたいていの場合、1秒が30フレームからつくられています。
「なんだ、1/30秒か」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、
映像だけ流すのであれば、1フレームの差というのはそれほど感じません。
ただそれが音楽と組み合わされると、不思議なことに“ズレ”を感じるんですね。
特に音楽のリズムや区切りに合わせて写真(場面)を変えたりする場合です。
自分では音楽に合わせて写真を切り替えたつもりが、
微妙にズレていることがよくあります。
それがたった1フレームの差だったりするのです。
ここにまでこだわることもまた、
“素人っぽくない映像”のために欠かせないことでもあります。
以上を書いた上で、僕が一番好きだったタイのe diveさんのスライドについて、
「なぜそれが好きと感じたのか」を書いてみようかと思います。
(ほんとはその動画とか貼れると一番わかりやすいのですが…)
e diveさんのスライドは、陸上と水中の写真をつないだ形式でした。
テーマは、「タイの地震と、そこから復興する町、海」というもの。
まずこのテーマに普遍性がありますよね。
ダイバーでもノンダイバーでも、大人でも子どもでも、一発でわかります。
ターゲット(=ほぼ全員)と、メッセージが明確になっています。
写真のつなぎ方も、けっして急がず、かといって単調にもならず、
それぞれの写真とつなぎ方に意味がありました。
僕がすごくよく伝わってきていいなと思ったのは、
写真のカラー→モノクロの反転でした。
前半に出てきたのは、タイのカラー写真がモノクロに反転するシーン。
その反転だけで、地震によるショック、その悲惨さを上手く表現していました。
後半に出てきたのは、逆にモノクロの写真がカラーに反転するシーン。
ここでもまた、この反転だけで、
復興にかける現地の人たちの「希望」を表現できていたんですね。
2.で映像演出効果について書きましたが、
まさにこれぞ映像演出をすごく効果的に(意図をもって)使ってらっしゃるシーンだなー、
と感じました。
また、全編を通して音楽も良かったです。
これは僕の好みもありますが(笑)、
スライド内容とマッチしていて好きだったのです。
そんな感じで、僕はe diveさんのスライドが一番好きでした。
このように、自分が好きだと感じたスライドがあったら、
「なぜそのスライド(映像)を好きと感じたのか」を言葉にしてみる、
というのも効果的な方法かと思います。
以上、いろいろと偉そうなことを言いました。
今年は自分も4,5年ぶりに水中映像の撮影&編集をしようと思っています。
(こんな偉そうなこと言って、ハードル上げてますね…)
とりあえず、自分もみなさんと負けないぐらい楽しんで撮りたいと思います!