先日、友人でもある水中写真家・古見きゅうさんが、写真集「WAO!」を発売しました。
それにともなって、新宿のコニカミノルタプラザでは、同名の「WAO!」という写真展も開催しているので、今日はそれも観に行ってきました。
僕にとってもすごく良い写真集&写真展だったんですが、特に子どもたちにも見てほしいなと思った作品だったので、感想を書いておきます。
海の旅人、ウミガメのワオが巡る水中の世界
この写真集と写真展は、ワオというウミガメが水中の世界を巡るというストーリーに沿って展開されます。
以下、まずは写真集について。
古見きゅうさんは水中写真家なのでまずここから褒めるのもなんなんですが(笑)、文章がとても良いんですよね。
飾らない、難しくない言葉で、それでいてそこにはユーモアや優しさがあって。
冒頭のこのくだりとか、簡単そうに見えて、文章のリズムが作家の書くよくできた絵本みたいなんですよね。
物心ついたころから家族がいなかったワオは、
ひとり自由気ままに暮らしていました。泳ぎ回る小さな魚たちをボーッと眺め、
お腹が空いたら海藻を食べ、
近所をふらりと泳いで、
眠くなったら、いつでもどこでも自由に寝ていました。「WAO!海の旅人ワオの物語。」より
こういうリズム、書けない人はなかなか書けません。
それもあって、ワオの暮らしている優しい世界がフワッとイメージできます。
あと、ここらへんの言葉遣いも、「あー、この人、海が好きなんだな」と感じました。
小さな海藻が芽吹き、
背比べをしているような場所に出ました。
海を潜っていて、確かに小さくて緑色の海藻が一面に生えている、かわいらしい風景に出会うことはあるんですが、それを「背比べ」って。
僕にはできない表現です。
あと言葉遣いと言えば、これも。
大きなジンベエザメがワオに向かって話しかけるシーン。
おまえのことは潮の噂で聞いていますよ。
「風の噂」じゃなくて「潮の噂」なのね、とクスっとするのと同時に「確かにそうだよな」と妙に納得したり。
そんな風に、水中写真家なのにやけにその情景が浮かび上がる言葉で綴られる物語には、生きていく中での出会いや別れが描かれています。
並んだ言葉を読み終わって、そしてそこに並ぶ色とりどりの鮮やかな写真を見終わって、「生きていくのってやっぱり楽しいものなのかも」と思える写真集です。
そういうメッセージを強く感じるからこそ、子ども、特に小学生の子どもたちに読んでほしい一冊だなと感じました。
水中写真展としても面白い
新宿のコニカミノルタプラザで見た写真展も、とても楽しい体験でした。
ここからは、写真展についての感想です。
世界中でスマホ含めカメラが爆発的に増えて、今って一枚の写真だけなら、プロの写真家じゃなくても人を唸らせる作品が撮れるようになっています。
そんな時代でプロの写真家にとって大事なのは「写真を通じて何を伝えられるか、何を伝えることに成功するか」だと思います。
その命題について、今回の古見きゅうさんの「WAO!」は写真展だからこそより豊かに提示できる「ストーリーを紡ぐ」という形で、明確なメッセージを伝えられているんですよね。
それも、古見きゅうさんらしい、少しとぼけたユーモアと優しさのあるタッチで。
例えば、中盤ぐらいにでっかいジンベエザメと端っこに小さくウミガメ(ワオ)が写ってる写真があるんですね(写真集にも掲載されています)。
これなんて、ストーリーがあることによって写真がガラッと違って見えることの良い例だなと思いました。
もし、この写真を一枚だけ見せられたら、ここまで心に刻まれることなく、「おお、ジンベエザメ大きいね。あ、隅っこにウミガメが写ってるね」というぐらいで終わっていたかもしれません。
もしかしたら、撮った人によっては、「ジンベエザメだけかっこよく撮りたかったのに、ウミガメが入っちゃったよ」とも思っていたかもしれません。
ただ、その写真が、「ワオというウミガメが世界を旅している」というストーリーの中で見ると、全く違う意味をもって迫ってくるんですよ。
「おお、こんなデカいジンベエザメに出会ったらビックリするだろうな!」っていうワオの視点でこっちも見るようになりますし、ワオの旅には色んなことが起こるんだなということがストーリーの中で無意識のうちにスッと入ってくるんです。
そうやって、一枚の写真が一つの写真展、ストーリーの中に組み込まれることで、全く違った見え方をするっていう。
その連続が、この写真展を面白くさせているし、見終わった後に「ああ、一つの物語を最後まで見た」という充実した読後感のようなものを感じるようにさせているんだと思います。
いやー、面白かったです。
古見きゅう写真展「WAO!」開催概要
この写真展、まだ4月10日までやっているので、よかったらぜひ。
【開催期間】2015年4月1日(火)~4月10日(金)10:30~19:00(最終日は15:00まで)
【場所】コニカミノルタプラザ
4月4日(土)には、ご本人によるスライドトークショーもあります。
海の旅人ワオのスライドトークショー
【日時】2015年4月4日(土)14:00~15:00
【場所】コニカミノルタプラザ イベントスペース
【参加費】無料
【定員】50名
【参加方法】先着順
※開演2時間前から会場で整理券が配布されます。
イベントの様子はコニカミノルタプラザUSTREAMチャンネルでも中継予定。
USTREAM: コニカミノルタプラザ
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ところで、会場から帰る時に写真集「WAO!」を買って、古見きゅうさん本人に「心のあるメッセージを書いてください」ってお願いしました。
そしたらきゅうさんは「それ、心のないオレに言う?」って言ってたんですが、そういうとぼけた冗談みたいな嘘を言うところが自分に似てるな、と思いました。