先日の’10上方水中映像祭り、また去年の五反田映像祭Vol.8と、
二つの水中映像祭に行ってまいりました。
そこで感じたことをまとめておこうかと思います。
それぞれの映像祭に関する感想エントリは、こちらをどうぞー。
’10上方水中映像祭りに行ってきました
五反田映像祭Vol.8に行ってきました
ここでお話する対象としては、それぞれの映像祭で出品されていたような、
「水中動画もしくは水中写真のスライドに音楽をつけた、“水中映像”」
とさせていただきます。
いちおう僕は映像制作など本職にしているので、
その点からお話させていただきます。
また、僕は自身でも4~5年前にビデオ(SonyのVX-2100)で水中動画を撮り、
それを編集していたりしていました。
しばらく動画はお休みしていたのですが今年は再開しようと思っていまして、
そのための(自分自身の)まとめとしても書こうと思っています。
水中に限らないことなのですが、
映像を制作する時に気をつけることって、大きく分けて以下の三つだと思うのです。
それでは、以下でそれぞれについてお話してみたいと思います。
1.メッセージは何なのか
一番最初にするのは、
メッセージ、つまりその映像でのテーマを決めることですね。
「大瀬崎で撮ったマクロ写真!」でも、
「透明度の高い海の、めっちゃ綺麗な青!」でも、
人それぞれで好きなものを選べますので、これは比較的簡単かと思います。
ただ、もう一歩踏み込むこともできます。
それはつまり、「自分はなぜそれが好きなのか」「それのどこが好きなのか」を
考えることです。
テーマに沿った写真(映像)を集めることは、意外と簡単かもしれません。
ただ、そこから「人にその良さを伝える」のはまたちょっと違います。
その時に
「大瀬崎のここが好き」
「青い海でこんな気分になれる」
などが分かっている(言葉にできている)と、より伝わりやすい映像になるかと思います。
2.ターゲットは誰なのか
1.の「メッセージは何なのか」は、みなさん、写真(動画)を撮る時点で、
ある程度は自然にできることかと思います。
やっぱり「好きなもの」だから撮りたくなるんでしょうし。
次は、「ターゲットを決めること」です。
その水中映像、あるいは自分が好きなことを「誰に」伝えたいのか。
二つの水中映像祭を拝見して、
この部分で「もったいないなー」と思ったことが多くありました。
単純に言えば、
「ダイバーだけが十分に楽しめるような映像を作るのか」
「ノンダイバーも同じぐらい楽しめるような映像を作るのか」
という二点で、天と地ほど作り方は変わってくると思います。
僕はどっぷりダイバーな人間です。
ただ、個人的には、
こういう場ではノンダイバー向けの映像をつくってほしいと思ってしまったりします。
これらの映像祭は一般のお客さんが来るイベントですし、
そういうお客さんは水中世界を普段は見ていない方々ですし。
海の素晴らしさを感じてもらう、すごくいい機会だと思うんですね。
もちろんこれらの映像祭で作品を発表するのはアマチュアの方が多いので、
各々の方が「つくっていて楽しい」というのが一番大事だとは思うのですが…。
僕はノンダイバーさんにも水中世界の楽しさ・すごさを知ってもらいたいので、
自分がこういう場で発表するとしたらノンダイバーさん向けの映像をつくると思います。
(次回の出品を目指して制作いたします!)
ダイバーがダイバー向けに映像(スライド)をつくると、
時として「内輪だけで盛り上がってる感」が出ちゃうんですよね。
ダイバーにしかわからない言葉、
ダイバーにしかわからないネタを使うことが多くなっちゃいますからねえ。
それはダイバー限定の場でやった方がいいんじゃないか、と思ったりします。
ただ、どうしてもダイビングネタになっちゃうのは、もう仕方ない部分もあると思います。
ダイバーの性(さが)というか…、染み付いている部分もあるのでは、と。
例えば、上方水中映像祭りで広部俊明さんが発表された作品も、そうでした。
僕は個人的に(ダイバーとして)この作品は「すげえ!」と思いました。
広部さん自らが声を重ね合わせてオリジナル音楽を自作していらっしゃったり、
それが映像にもすごくマッチングしていたり。
すごく楽しいスライドでした。
ただ、この作品の笑いどころで窒素をネタにした部分があるんですが、
それってノンダイバーの方には分からない話ですよね。
「ちーっそ!(を抜いて浅場に戻ろう)」という素敵なコーラスだったんですが、
一般の人からすれば「窒素?なんで?」っていう感じですよね。
ダイバー的には一番の笑いどころが一般の人には伝わらないという、
ちょっとしたギャップに胸が痛みつつ、僕は笑ってました。
広部さんは、テレビ朝日チャンネルで海からのメッセージという番組を担当されています。
プロダイバーの中でもかなり一般の人と近い位置にいる広部さんであっても、
ダイバーの性(さが)のようなものが働いてしまうのかな、と。
(すいません、プロの方なので例に挙げてしまいました…)
一般のノンダイバーさんにも同じぐらい伝えられて、楽しんでもらうには、
ダイバーは意識を強引にでも“外向き”にしないといけないのだと思います。
上方水中映像祭りで、ちょうど僕の後ろに小学生ぐらいの男の子がいました。
僕が水中映像をつくるとしたら、
あの子にも100%伝わって楽しんでもらえることを目指したいな、と思っています。
まあ、そんなこと言いながらも、
素晴らしい水中写真・水中映像に余計な説明は要らないし、
だからこそその可能性は無限大!
という部分も大いにあるんですけどねっ。
3.映像は、絵と音で決まる
すごく当たり前の話なのですが、
映像の中には絵と音(音楽)しかないんですよね。
素材となる動画と写真は、海の中での勝負
になります。
それを一つの映像作品としてつくり上げる時に、
「どの素材をどうやってつなげて絵をつくるか」
「どういう音楽・音をどうやって入れるか」
が重要になってくると思います。
そしてそれらは、1.の「メッセージ」、2.の「ターゲット」から直結することです。
メッセージとターゲットがしっかり定まっていれば、
ここの作業はだいぶ楽になってくると思います。
ちょっとだけ具体的な話をしてみますと、
現在のダイバーのメイン層って30代半ば~40代後半、ぐらいかと思います。
これを音楽に当てはまると、まさに80年代。
洋楽がガンガン日本に流れていた頃ですよね。
実際、その年代のダイバーさんはその頃の洋楽がすごく好きだったりもすると思います。
ただ、そこで例えば80sの洋楽大好きなダイバーさんが
自分の作品にも80sを使うとなると、
それはやはり「一部の人には伝わりづらい」ものにはなってしまいます。
もちろんそれがダメというわけではありませんが、
「よりたくさんの人に伝えたい」ということであれば、
もっとその作品に合った音楽を選ぶ余地があったかもしれません。
これが、メッセージとターゲットから音楽が定まってくる、
ということかと思います。
■Vol.1まとめ
…と、いろいろと話してしまいましたが、
実際に二つの映像祭を拝見して、「もったいない」と思う作品がいくつもあったことは確かです。
そのために、こんなエントリを書こうと思いました。
もったいないというのは例えば、
「水中写真はすごく上手いのに、“伝え方”で損をしている」
「水中写真はすごく上手いのに、それに合った音楽ではないのでチグハグしてる」
というような作品です。
ブログだと一つのエントリに一つの写真をアップして、
「これでどうだ!」的に見せられるのですが、
4~5分の映像(スライド)となると、一気に難易度が高くなるんですよね。
いろんな方々の作品を客観的に拝見して、
それを自分の作品にも活かすべく、文字にしてまとめてみました。
なお、これをVol.1としましたが、
Vol.2ではもうちょっとだけ具体的なことを書こうかと思っています。
(今回はやや抽象的な話になってしまったので…)
と同時に、前回のエントリで
「一番好きだったのはe diveさんのスライド」
と書いたので、それがなぜ好きだったのか、なんてことも書こうかと思います。
よろしければ、引き続きお付き合いくださいー。