Vol.1、Vol.2と続いた小田原セミナーのレポートも、今回で完結です。
前回までの分は、こちらからどうぞ。
「離島はいろいろ大変」 第11回潜水医学講座レポVol.1
「ダイビング事故は増えているのか?」 第11回潜水医学講座レポVol.2
小田原セミナーでの講演テーマは残り二つあるのですが、
このエントリでまとめてお伝えしたいと思います。
まずは一つ目(全体では三つ目)から。
■エイジングとダイビング(動脈硬化症の重要性)
お話をしてくださったのは、江東病院の小泉章子先生。
なんとダイビングもダイブマスターで、
TDIのテクニカルダイビングも受講されているとか。
(僕もTDIなので、なんだか勝手に親近感。笑)
エイジング、まあ中高年(40代~)になったら気をつけましょう、という話。
動脈硬化によるダイビング時の疾患は、致命的なリスクにもなり得ますので。
具体的に気をつけるべきことは、以下の4つ。
- 禁煙
- 運動(トレーニング)
- 血圧の管理
- 肥満
「いやあ、分かってるんだけどねぇ…」というダイバーさんも多そうですが(笑)、
そこはぜひ気をつけてください、ということで。
なお、小泉先生の持論としては、
「当日の血圧が140/90以上の場合はダイビングを控えた方がいいのでは」
とのことでした。
■減圧症にならない潜り方
さて、次は山見病院の山見信夫先生による講演。
スライドを中心に、それについて口頭で説明される講演形式。
そのスライドが、ここ10~20年間の潜水医学の論文がたくさんまとめられていて、
なんだか「近年の潜水医学総まとめ」みたいな貴重な資料でした。
いやー、しかしですね、
「減圧症にならない潜り方」って難しいですよね。
潜ったからには、基本的に減圧症になる確率は0%ではないわけですから。
ちょっと言葉のあやですけれども、
「減圧症にならない」という言い方がOKなのかとか、ややグレーなところ。
「100%減圧症にならない」ことを目指すなら、
潜らないのが唯一の確実な方法なんですよね。
「減圧症になりにくい潜り方」とか、
「減圧症の確率を少しでも減らすには」とかなら、
すんなり腑に落ちるのですが。
もちろん減圧症は避けたいですし、避けるべきなんですが、
腫れ物に触れるような過度な(ヒステリックな)扱いもしたくはないな、と思います。
■一つの理論には、たいていそれに反対する理論が出てくる
潜水医学も、もちろん完成した医学ではありません。
例えば近年の主流だったディープストップに関しても、
DANは推奨しているものの、
それに反対する(効果がないとする)論文も出ているようです。
なので、「これ!」と断言できることはできないのですが、
「両方の考え・論文がある」ということは知っておいて損はない、ということかと思います。
なお、ディープストップに関して改めて記しておきます。
DANによれば、例えば水深-25mに20分以上潜水した時、
-15mで2.5分以上ディープストップを行うことが推奨されています。
その後、-5mで3~5分の安全停止と併用する、と。
以上は「安全停止」に含まれる例ですが、
この他にもすごくたくさんの項目について触れられていました。
それら全てについて、
「こういう考え方が主流だけど、こういう反対意見もある」
と記していたらちょっとキリがないので、すいませんが項目だけ並べておきます。
- 浮上速度
- リバースダイブ
- 年齢
- 性差
- アルコール
- 肥満
- 脱水
- 振動
- シャワーや入浴
- 疲労
- 四肢労作
- 最大酸素摂取量
- 喫煙
- 二酸化炭素蓄積
- 月経
- 低用量ピル
- 運動
- 胸腔内圧増加(卵円孔開存)
- 寒冷曝露
- 体温(冷えと保温)
- 潜水後の航空機搭乗
- 潜水後の高所移動
ただ、これまでの常識を覆すような新しい考えがあるというわけでもなかったので、
基本的には今までの認識でいいかと思います。
(とは言いつつ、ダイバーの間でも意見の分かれる項目はいくつもありますよね…)
■これ、もうちょっと噛み砕いて誰でも見られるようにならない?
で、最終的に思うのは、
こういうことをもうちょっと噛み砕いた(読みやすい)形で、
ダイバーさんの目に触れる場所に置いとけないかなー、ということ。
日本高気圧環境・潜水医学会にはHPもあったり、
今回のセミナーで配布されたような冊子もつくったりされているのですが、
これをもうちょっと“普通の”ダイバーさんに還元できないかなーと思うんですよね。
というわけで、ゆくゆくはスキューバダイビング.jpでまとめられれば、
と思っています。
(手伝ってくださる方は、絶賛募集中!笑)
当ブログ内でのレポートはやや中途半端なものになってしまっていて、
ちょっと歯がゆい感じがありますし。
小田原セミナーについて、とりあえずは以上でレポート終了です。
次回は、小田原セミナー当日にTwitterで行っていた“実況”のことについて、
番外編的に書いてみたいと思います。