昨日のVol.1に続いて、Vol.2です。
(Vol.1はこちら→「離島はいろいろ大変」 第11回潜水医学講座レポVol.1)
テーマは「レジャーダイバー 10年間の潜水事故分析」。
話してくださったのは、日本海洋事業株式会社の毛利元彦さん。
■この講演はどういう形式で行われていたか
まず、
「このセミナー(このテーマ)がどういう形式で語られていたか」から記しておきます。
受講者はホールに入る前に、入口で小冊子をもらいます。
こんなやつ。
その中にこのセミナーの各章についての前段のような文章があります。
こんな感じ。
(一部、僕のメモあり。笑)
つまり、我々受講者はこの冊子を読んで、
「へえー、こういう感じのことを話してもらうんですね」
となんとなく把握してから、登壇者の話を聴く、という形になります。
■冊子では事故者数のデータ、話されていたのは実際の事故の分析
ここで強調しておきたいのは、
冊子で記されていた内容に沿って毛利さんが話されていたわけではない、ということ。
お互いが矛盾するというわけではなく、
それぞれ異なるテーマに言及されていた、ということです。
具体的に申しますと。
冊子に書かれていたのは、この10年間の潜水事故の「数字的なデータ」。
(ただしグラフとかは一切ないので、やや見づらい)
それに対して、毛利さんが主にお話されていたのは、
具体的な潜水事故の状況とそれについての見解。
それを踏まえて、レポートをさせていただきます。
■冊子に掲載されていたダイビング事故データいろいろ
まずは、この10年間の潜水事故者の総数。
合計は366人。
(決して「死者」ではありませんよ!)
ちなみに、潜水事故「件数」では、272件。
続いて、潜水事故の中の内訳。
「その他」というのは、パニックや減圧障害を起こしたケースなど。
なお、毛利先生は主にこの「その他」の具体的なケースについて語られていました。
「Missing Parner」とは、いわゆるバディロスト、
バディを見失って一人になってしまったケースです。
■それぞれの数字が語るもの
ちょうどセミナーの際に寺山さん(和尚さん)がつぶやいていたことを引用してみます。
セミナーの中で、「30歳代・40歳代の潜水事故が多い」という話があったのです。
それに対して、
「いやいや、でもダイビング人口ってもともと30~40歳代が多いんじゃない?」
というご指摘です。
そうですよねー。
そこの分母を語らずして「30~40歳代は注意!(危険!)」と言うのはやや違います。
(和尚さんの言うところの「ミスリード」)
今回の潜水事故分析では、その分母の部分の話がやや少なかったですね。
とはいえ、逆のケースもあると思いました。
例えば、潜水事故は、一時は低減傾向にあったものの、
平成18年から再び増加している、という数字。
この場合の分母は、「1年間でダイビングをしている総数」、
もしくは「アクティブなダイバーの総数」、です。
ただ、この不景気と言われ続けている世の中、
ダイビングをする人・日本全国のレジャーダイビング総本数が増えているとは考えにくいです。
これはこの数年間の話ですが、
レジャー白書やスポーツ産業白書では、
ダイビングをはじめとしたマリンスポーツの落ち込みが記されています。
この1年間の話でも、Cカード協議会の動向調査では、
2009年のCカード発行総数は前年比88%と、
明らかに減っていることを明記しているデータもあります。
つまり、分母=ダイビング自体の機会が減っているのに、潜水事故は増えている。
これは単純に事故数が増えるよりも、より好ましくない結果と言うことはできます…。
■だから、より気をつけよう!!
なので、結論としてはやっぱりこういうことになります。
ガイド・インストラクターの側も、ファンダイバーの側も、
よりいっそう安全に対して注意を払わなければいけないですね。
毛利先生は、これらの事故の原因を、主に三つに分けていました。
・インストラクターの質の低下
・ダイバーの自己管理
・ダイバーのスキル不足
うーん、ここらへんになるとほんとにテーマがすごく広くなってしまいますが…。
ただ、少なくとも、
「体調が悪かったら無理をしない。海は決して逃げやしない」
という意識は持っていたいものですね。
なお、毛利先生は個別の事故についても紹介・見解を述べられていましたが、
(駆け足だったこともあって)状況に関する説明がやや十分ではないと感じたので、
ここでは触れないでおきます。
(「月刊ダイバー」さんの「危機からの脱出」とかの方がずっと具体的かと)
もちろん、潜水事故は減るにこしたことはありません。
ただ、個人的には、海という特殊な環境にこれだけたくさんの人が潜っていて、
この事故者数というのは決して多すぎるとは思っていません。
つまり、ことさらに「ほら、潜水事故は多いんだよ!」と脅すつもりはないです。
この数字に「抑えられている」「防げている」のは、
ガイド・インストラクターの意識や努力の結果。
潜水事故を語る際は、いつもそっち側の視点ももっていたいと思っています。
また長くなってしまったので、次のテーマはVol.3で!