世界的に有名なサッカークラブ・FCバイエルン・ミュンヘンと、これまた世界的に展開しているサッカーウェブメディア・Goal.comが提携したというニュースがありました。

これ、ネイティブアドとオウンドメディア、単純にどちらかには分類できないような事例だなと思います。

日本語でこのニュースについて言及されてる記事は、今のところこのブログぐらい。

FCバイエルン・ミュンヘンがGoal.comとの提携で目指すネイティブアドの出稿とその先のメディア化

このブログでは「ネイティブアド(の出稿)」とされていますが、原文を読むと、単に「出稿」とだけでは括りきれない提携内容だな、と思いました。

以下はFCバイエルンからの公式リリースです。

FC Bayern will receive editorial and video content surrounding the Bundesliga from Goal.com, offering fans targeted, comprehensive coverage on the club’s media platforms.

(FCバイエルンはGoal.comからブンデスリーガについての編集コンテンツ・動画コンテンツの提供を受け、クラブのメディアプラットフォーム上でファンに向けて包括的な記事を提供できる)

Through the cooperation, FC Bayern will reach Goal.com’s millions of soccer fans around the globe.

(この提携によって、FCバイエルンはGoal.comの世界数百万のサッカーファンにリーチできる)

For Goal, the partnership entails receiving behind-the-scenes content from FC Bayern, allowing its readers, particularly in the U.S. and China, a closer look into the world of FC Bayern.

(Goal.comにとっては、バイエルンから舞台裏のコンテンツの提供を受け、それをとりわけアメリカと中国の読者に届け、FCバイエルンにより親近感を感じてもらうことになる)

FC Bayern and Goal.com announce partnership – FC Bayern München AGより

提携内容として、バイエルン側がGoal.comの編集体制のバックアップを受けて作られたコンテンツを、自分たちのプラットフォーム(ウェブサイトやソーシャルメディア)上で配信できる、ということは確実そうです。

ただ、Goal.com上でバイエルンの、特に舞台裏の記事がどう掲載されるのかは、Goal.comのリリースや他の英文の報道を読んでも、あまり具体的には書かれていません。

でも、Goal.comの世界(特にアメリカと中国)に広がる読者にリーチできることをバイエルン側が求めていることは確かだとリリースからは見受けられるので、いずれにせよGoal.com上でのバイエルンの記事は、量としても深さとしてもこれまでよりアップするんでしょう。

この場合、Goal.com上に掲載されるバイエルンの特集的な(舞台裏的な)記事の扱いは、気になりますね。

つまり、一つのジャンル(この場合はサッカー)における大きなメディアと、そのジャンルの中の大きなプレイヤーが提携した場合、それは「広告」なのかどうか、っていう。

それってネイティブアドになるんでしょうか。

いやそれってもうオウンドメディアに近くない?みたいな。

そもそも、一つのメディアが一つの取材対象とそこまで提携を大々的に認めていいの?という点も議論が生まれるでしょう。

仮にこの「提携」に、金銭の授受が発生しておらず、お互いのリソース等の交換だけで合意がなされているとしても、Goal.com側は一つのメディアなわけなので、その点の「それって広告的なんじゃないの?」という指摘はされそうです。

例えば日本の一般的なサッカー雑誌やサッカーサイトが浦和レッズとだけ提携をして、レッズの舞台裏にフォーカスした記事や監督のそこでしか語られないインタビューが載るとしたら。

もっと極端に言えば、例えば日本のある新聞と政党が同じような提携をして、政党側は新聞の編集力を利用して自党発信のコンテンツを生み出し、新聞側はその政党の記事ばかりを詳細に載せるようになったら。

今年になってネイティブアド議論が真っ盛りだった日本で、こういったタイプの提携が発表されたら、また議論が生まれるでしょうし、もしかしたら(僕が知らないか、正式に発表されてないだけで)このような提携はもう存在しているのかもしれません。

今回のFCバイエルンとGoal.comの提携のニュース、けっこう難しい問題だな、と思いました。